日本で唯一のブラック・ミュージック専門誌「Blues & Soul Records」のNo.153から私の連載が始まった。
連載のタイトルは"Fool's Paradise"
かって自分のソロ・アルバムにもこのタイトルを使ったが、元々はジョニー・フラーというウエストコーストのブルーズマンの曲だ。でも、私が最初に聴いたのはサム・クックがカバーしたバージョンだった。
酒を飲んで夜な夜なだらしない生活を送る自分を両親は忠告し叱ってくれるが、そのパーティのような日々をやっぱり止められない自分・・・という内容の歌だ。つまり、馬鹿者の天国/Fool's Paradise
ブルーズを好きになって、ブルーズを歌うようになって約半世紀。いまもしっかりした生活をしているとは言いがたいかも知れないが、若い頃は本当に"Fool's Paradise"だった。
想い出すと随分と無駄な時間と金を遣ったようにも思えるが、他のことでは代え難い楽しさもたくさんあった。人間は決めたようにはなかなか生きられない。朝まで呑んでいると二日酔いになるとわかっていてもその時の楽しさは明日を忘れさせる。ダメだとわかっていてもやってしまう。もちろんそんなに馬鹿なことをしない意志の強い人もいるだろう。
いまはもう昔日のようなFool's Paradiseを続けるような体力も気力もない。でも、自分の中にひとつのFool's Paradiseはずっとある。
それはブルーズという音楽を好きになってしまったことだ。そして、ブルーズを歌い始めたことだ。私はいまもブルーズのFool's Paradiseにいる。
それで連載のタイトルにした。
読んでいただければ幸せです。