ボニー・レイットの1992年のドイツでのライヴDVD。
会場はそれほど大きくない。大袈裟な演出も最近流行りのサプライズとやらもなく、派手なアクションや見せびらかしのテクニック披露もしない、さりげなく深い演奏が淡々と続いていく。
1989年に"Nick Of Time"が大ヒットしてから3年後のライヴなので"Nick Of Time"の曲を中心にしたライヴだ。こうしてライヴで聴いてもあのアルバムはいい曲揃いだった。
4曲目に歌われる"I Can't Make You Love Me"・・・・その辺の小娘には出せない、揺るぎない生き方をした大人の女性しか出せない情感。さらりとした表現だが奥は深い。「ああ、いい声だなぁ・・いい女だなぁ・・・」と聞き惚れ、見とれてしまった。
6曲目の"Kokomo"ブルーズの師匠であり、スライドの師匠であるフレッド・マクダウエルの曲。身に染み付いたブルーズ・フィーリングがじわっと出てくる。若い頃に培ったブルーズを柱とした彼女の音楽性がしっかり根ざしているのがわかる。
自分の声がブルーズ向きでないとインタビューで言ってましたが、いやいやそんなことはないです。とてもブルージーですよ、ボニーさん。がなるように、やたらパワフルさを強調して歌うだけがブルーズ・シンギングではないと思います。
スライド・ギターに至ってはもう、他の誰も弾けない、彼女しか弾けないフィールドを作ってしまってます。
そして、オリジナルをやっても、ブルーズのカヴァー曲をやっても差がない、違和感がないのはやはり自分のルーツを忘れてないからでしょう。
彼女の歌を自然に支えるバンドもすごくいいです。
"Nick Of Time"が大ヒットしたあと来日した時のステージで、「自分のバンドでまた日本に来れてよかった」と嬉しそうに語った彼女。一時はバンドがなくてひとりでコーヒー・ハウス、小さなクラブを転々と旅していた。
ブロードウェイのスターである父親をもつお嬢さんなのに、高校生でブルーズ好きになってしまってフレッド・マクダウエルに弟子入り状態になってしまったヒップな女性。
なかなかヒットに恵まれず大ヒットは"Nick Of Time"まで待たなければならなかった。
でも、陽が当たっても雨に打たれてもずっとギター片手に旅してきた筋金入りです。
来日して欲しい女性シンガーのNo.1!
そして、一生ないだろうけど・・・・・、一緒に酒を飲みたい女性シンガーNo.1!
さぁ、もう1回見るか。