世の中には約束事というのがあり、何人かの人間が共同でひとつ事を成し遂げるにはみんなが約束事を守らないと成果は上がらない。
ブルーズを何人かで演奏する場合、一般的なブルーズの定型のパターン(1コーラス12小節、3コード)というので演奏されることが多い。決められた小節数でコード・チェンジすることが約束事だ。
しかし、ライトニン・ホプキンス、ジョン・リー・フッカーといったカントリー・ブルーズマンの場合、ひとりの弾き語りで演奏することから始まっているのでコード・チェンジは気ままにチェンジされてしまうことが多々ある。すると、バンドはパニックとまでは言わないが、戸惑い状態になる。
結局、歌っている御大に合わせるしかないのだが、音楽にやたら整合性を求める人にとってはこの混乱がこの上なく気持ち悪いらしい。でも、私は長い歳月、そういうぐしゃとしたブルーズを聴いているので、いまはさしてその事が気にならなくなってしまった。慣れは恐ろしい。
このテキサスのカントリー・ブルーズマン、スモーキー・ホグのアルバムにもライトニン、ジョン・リー同様の小節数、コードのズレが多々あるのだが、なんとなくバックのピアノやベースがうまくフォローしている。ズレる度に「おっと」と思うだけで、まったく気持ち悪さは感じない。却って面白く思ってしまう。まあ、一緒に演奏している人たちはちょっと大変だろうが・・・。かって御大ジョン・リーはこう言われた-「コードのチェンジというのは自分の気持ちがチェンジする時にするものだ」 御意!
KENTレーベルのこのレコード盤。収録されている曲はすでにCDで持っているのだが、ジャケット見ているうちに欲しくなってしまった。牛乳瓶二本とドライ・ジンの瓶一本。数多い酔いどれのブルーズマンの中でも有名な酔いどれホグ。ジンを飲み過ぎた翌朝は牛乳を飲んでいたということか・・・。それとも飲む前に牛乳を飲んで胃を保護しろよということか。コンセプトがよくわからんジャケット写真だが、なんとなくいい感じではないか。ライトニンほど有名ではないが、テキサスの男っぽいカラッとしたブルーズを聴かせてくれる。中身もいい感じだ。