先日(4/28)の大阪の「ブルーズ講座」でも来てくださった方にプレゼントに出した本です。映画化(邦題:ヘルプ 心がつなぐストーリー)もされてすでに公開されたのでご覧なった方もいるでしょう。
私はまだ映画は観ていないのですが、原作の本、上下巻を一気に読みました。
舞台は1960年代の南部ミシシッピー。作家志望の白人女性が自分を幼い時に育ててくれたヘルプ(黒人メイド)のことを想い出し、そこからずっと変わらない人種の差別に着目しヘルブたちの証言、告白を本に書き上げていくといったストーリー。
この小説でも書かれているが南部の白人上流階級の子供というのは、ほとんど黒人のメイドによって育てられる。白人の母親たちがパーティやお茶会に忙しいからだ。中には泣いている自分の子供をなだめる術さえ知らないで、メイドになんとかして・・と預けてしまう白人の母親もいる。そんな中で幼い白人の子供は実の母よりもメイドの方になついてしまうことも多い。当たり前のことだが、白人であろうが、黒人であろうが、幼い子供に人種の意識などない。それが中学、高校、大学と行くにつれて、親、学校、友人たちに根拠もない白人の優位の意識を自分の中に作られていく。
しかし、この小説の主人公は幼い頃に、いろんなことを教えながら自分の面倒をみてくれたメイドのことを懐かしく想い出し、そして南部でのいつまでもなくならない人種差別について考え始める。そして、メイドたちをインタビューしてそれを本にして世の中に人種差別について問題提起しょうとする。
しかし、60年代の南部はまだ黒人が白人と同席することさえ白人社会では許されない時代。
こういう本を書くこと自体に危険を伴うほど、差別主義者が横行している時代。
黒人のメイドたちもインタビューを受けることでメイドの仕事がなくなったり、白人にリンチを受けるのでは・・と最初ははばかるが、最後にはこの白人女性の強い思いに心を許して互いに本をつくることに向かっていく・・・。
あとは、読んでみてください。
60年代、公民権運動が盛り上がり、キング牧師やマルカムXが登場した時代の南部の様子が垣間みられる。黒人の側から書けばまた違うニュアンスになることもたくさんあると思うが、それでも60年代のアメリカの人種差別の様子について知る事がたくさんある本だ。ここからアフリカン・アメリカンの文学に入り込む人もいるのではないかと思う。
そして、こういう人種差別の話は、読む自分自身の中へ差別意識の有無を問う事になる。それがかなり大切なことだと思う。
とても興味深く、構成やストーリーの流れもよくてあっと言う間に2巻を読んでしまった。映画も観てみたい。
そして、最近またリチャード・ライトの「ブラック・ボーイ」を読み直している。
2012年 5月8日 記