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騾馬とひと/ゾラ・ニール・ハーストン(ZORA NEALE HURSTON)/中村輝子訳 平凡社ライブラリー

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誕生日のお祝いに盟友の川田さんからいただいた、ゾラ・ニール・ハーストンの本。1920年代、小説家であり、民俗学者であるハーストンがアメリカ南部の黒人の日常の会話や生活、宗教、また伝承民話を取材して記録した貴重な一冊。おそらく、原本はほとんどが当時の黒人英語で書かれているものだと思うが、とてもうまく訳されていると思う。
アメリカ黒人によってブルーズが歌われたバックボーンが描かれていて、ブルーズという音楽をより深く知るための知識が堆積している。彼らが語る日常のおもしろい話の中に、正面から受け止めてしまうとあまりに辛すぎて死に向かってしまわなければならないような話をみんなで笑ってしまう・・・そんなことがたくさんある。人種差別され、終生貧困の中で暮らさなければならないアメリカ黒人たちの簡単ではない、複雑な心持ちが浮き彫りにされている。より良い明日が自分で描けない人生を送りながら、それでもどこかで笑いがないと生きていけない毎日。少しでも楽しく生きていこうとする彼らの力強さに教えられることは多い。
後半の「フードゥー(ヴードゥー)」の章は、単にアフリカ~ハイチ経由の土着的民間信仰と思っているものをひっくり返すような深く、エグい内容になっている。それはよりフードゥー信仰を知るために自らが身を挺してフードゥーの師に弟子入りし、事細かくその世界を取材したハーストンのだからこそ得られたものだ。フードゥー(ヴードゥー)とは何かを知りたい方は是非読んでみてください。

ブルーズ好きな方にとっては、差別と貧困と屈辱の中から生まれた黒人の音楽、文化の豊かさと暖かさと強さを改めて感じる本にもなっている。