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『ギター、ギター、ギターそしてパイプに爪やすり、そしてまたギター、ギター・・・・・』

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☆Albert King with Stevie Ray Vaughan/In Session....(Stax records 0888072318397)
タワーレコードにふらっと立ち寄ったらこのCD+DVDのプロモーション用映像が流れていた。
しばらく立見していたがアルバート・キングが愛器フライングVで結構気合い入れてギターを弾いているシーンが出てきて、これくらい気合い入っていれば「買いかな」と思い購入した。画像もまあまあいい。
しかし、私、もうひとりのスティービー・レイボーンがそんなに好きではない。レイボーンがギターがうまいのは認めるが、何故かずっと聴いていると飽きてしまう。歌も声自体があまり好きではない。もうひとつ言うなら彼が醸し出している人間的なムードが好きになれない。だから彼のアルバムもほとんど持っているのにあまり聴くことがない。
それでこのDVDで改めてしっかり彼を見てみようとも思った。
このDVDは1983年のテレビ放送用のスタジオ・セッションということだが、83年というとアルバム「テキサス・フラッド」でデビューした年。レイボーンはまだそんなに有名ではない。当然だが天下のアルバートの前で緊張している感がある。一方のアルバートはこの時までレイボーンのことを知らなかったらしく、「若造、どのくらい弾けるんだ?うん?」くらいの感じなのだろう。
それが曲が進むにつれて思いのほかレイボーンが弾けるので途中からアルバートが「おおっ、なかなかやるな、オマエ」っていう感じなってくる。
レイボーンが時折コピーしたアルバートのフレイズなんか弾くと、アルバートはちょっとニンマリして「そうか、オレのフレイズ勉強してるな・・・よしよし」てな感じなのだが、その後に「でも、若造・・・違うんだな!」とばかりにギュ〜イ〜ンとえぐいチョーキングをかまして弾き返す。負けじとレイボーンもアグレッシヴに弾きまくるのだが、いかんせんえぐさではアルバートにかなわない。ギターの音色もアルバートの方が私の好みだ。ギターのグルーヴの大きさが違う。アルバートの方が体もでかいがブルーズマンとしてのスケールもでかい。
しかし、セッションが進むとレイボーンのがんばりがアルバートにどんどん火をつけていき、アルバートのギターもテンションが上がっていく。かなり本気モードになったのか途中で椅子に座っていたアルバートがギター弾きながら立ち上がる。テレビに映っているという意識もあるのだろう。ここは若造に負けられないと思ったか・・・過去何度か見たライヴで平気で手を抜いたアルバートの姿は見られない。
選曲は"Born Under A Bad Sign"はじめアルバートがヴォーカルを取る曲が少し多いが、レイボーンの"Texas Flood"や"Pride&Joy"も演奏されている。
しかし、気がつくと「えらい、ギター・ソロが長いなぁ・・」と、延々と続くギター・ソロに途中でだんだん嫌気がさしてきた。
それでも『ギターは続くよ♪どこまでも♪』だ。スモーキー・ヴォイスのアルバートのヴォーカルが好きなのでもっと歌を聴きたいのだが、やっぱりギターが中心になっていく。
「もうギターはええよ」と、すっかりふたりのギターに飽きてしまい、一度見るのやめようかな・・・と思った頃、レイボーンがガンガンにソロを弾いている最中にアルバートが立ち上がって後ろのアンプの方に行き何をするのかと思えばパイプに火をつけて吸い始めた。なんだろ、なんだろ・・・余裕かましてるのか。疲れたのか・・・アルバート。なんか変な感じでオモロくなってきた。しかし・・・・・・いいのかアルバート、いくら相手が若造だからと言って演奏最中にパイプ吸っていいのか。またヒンシュク買うで。ちょっと演奏に飽きたか。わかるわ・・オレもギター・ソロばかり聴くの飽きた。
ひと息ついて今度はパイプをふかしながらギターを弾き始めるアルバート。「若造、まあ、がんばってるけどブルーズはこうやるやんやで!」とばかりに再びぐわ〜ん、ぎゅーんと弾き始める。鼻から煙出しながら・・・。
そして、しばらくするとまたもやレイボーンのソロの時、パタっとギター弾くのをやめて今度はなんと!ニヤニヤ笑ってポケットから爪ヤスリを出して爪を磨き始めるアルバート・・・・。爪やすりかよ!と思わず画面に突っ込んだ私。
パイプ吸って、爪やすり、次はポケットからおにぎりでも出して食べるのか・・・・なんかアルバートの傍若無人ぶりが出てきたなぁ。そこで来日した時に自分のギターのチューニングが狂っているのに、キーボード奏者をにらみつけて結局、そいつをクビにしてアメリカへ帰してしまったあの暴君ぶりを見せたライヴを想い出した。
そして、演奏は相変わらずギター主体で続いているが何やら面白い展開になりそうなのでそのまま見続けた。
しかし、期待していたような我がままアルバートにはならず爪やすりで終わった。(ちょっと残念。ポケットから鼻毛切りでも出して欲しかった・・・・)

最後はディレクターがたぶん事前にこう言ったのだろう−「あのぉ〜、最後にですねぇ、おふたりのことだから当然盛り上がると思いますが、やっぱり盛り上がった感じの絵が欲しいので、アルバートさん椅子からこう立ち上がってノってるぜっていうムード出してもらえますか。最後にギュイ〜〜ンとかましてやってください。ギャラはずみますから・・えっ?打ち上げ?やりますよ!やりますよ!もちろんプリティ・ガールたちも呼んでますよ、もちろんシャンパンもあります。それでですね、アルバートさんが立ち上がったら、レイボーン君も立ち上がってこう・・なんていうのか白熱した感じにもっていってギターバトルになってふたりでガンガン、ゴンゴンに弾いてください。ドスドスにやってください。よろしくでぇ〜す」
最後ふたりは立ち上がり、見事に盛り上がった感じで延々とギターを弾き、レイボーンが弾きまくっているのをギターを降ろしたアルバートがスタジオの隅で観ているというおもろい感じで終わり。ふたりは握手にハグ。めでたし、めでたしで終わった。

改めてギターを延々と弾くブルーズってつまらんなぁと思った。ベンチャーズじゃないんだから、ブルーズはね。とくにアルバートは独特の声とクールな歌いぶりがたまらない魅力なのでもっと歌って欲しい。ギターに関しては私はアルバートに軍配を挙げた。レイ・ボーンはとにかくギターのグルーヴが小さくて固い。アルバートが大きな円をひとつ描くようにギター・ソロを弾くのに比べレイ・ボーンは小さい円をたくさん描いている感じがする。
そしてわかったのは、決定的にレイボーンに欠けているものはブルーズへのダウンホームな感覚だということ。いいブルーズマンはどこかにダウンホームな感覚を持っていると言うのが私の持論だが、やはりレイボーンはイケイケ一本だ。それが疲れる原因かも知れない。彼はやはりブルーズマンというよりギタリストなんだと思う。でも、ブルーズはギター・ミュージックではなくてヴォーカル・ミュージックだからね。
そう言えばタワレコの帰り際にバディ・ガイの新譜も試聴できたので聴いてみた。それがまたギュワ・ギュワ・・ギューン・・・と芯のないふにゃふにゃのギターの音が延々としていた。何を言いたいのどころか、何を弾いているのかさえわからないバディ・・「なんやねん、これ」でした。もちろん買わなかった。ああ、ブルーズのいい歌が聴きたい。
2010年11月18日 記