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音放浪記(2011年1月24日〜30日)

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音放浪記(日々聴き彷徨っている音の数々)
1/24
1月も終わりに近づいてきた。早いなぁ。
シカゴも雪が積もってるみたいや。パソコンですぐにシカゴの天気がわかるこの時代に、もうシカゴでは恐らく聴けないブルーズを聴く。
☆Jimmy Rogers/The Chicago Blues Master You're The One
シカゴ・ブルーズ・サウンドのかたまりのようなアルバム。シカゴ・ブルーズにおけるサウンド、グルーヴ、ハーモニー、アンサンブル、ムード・・・大切なものがこのアルバムには詰まっている。時折聴いては背筋を正す。

コーヒーを飲んで朝ご飯食べて、テンション上げるためにこの1枚。
☆Spencer Wiggins/Feed The Fame
昔、擦り切れるほど聴いたスペンサー・ウィギンスのゴールド・ワックス・レーベルの「SOUL CITY In U.S.A.」というアルバムがある。去年リリースされたこのアルバムはそのゴールド・ワックス後、60年代後半から70年代のFameレーベル時代の録音を中心にシングルを集めたもの。切れ味良し、深みあり。無駄曲一切なし。グルーヴするアップテンポで踊り、スローで泣かされる。スペンサー・ウィギンスのダイナミズムあふれる歌声が全曲で聴ける。これぞ真のソウル・シンギング!

パソコンでシカゴの天気がすぐわかるこの時代に、オレのスケジュールをパソコンで把握しているニューオリンズの山岸。以前、電話した時も「ホトケ、えらい長いツアーやってんなぁ・・ツアーから帰ってきたとこやろ、おつかれ」と言われた。
☆Ronnie Barron/My New Orleans Soul
本当はロニー・バロンがドクター・ジョンを名乗るはずだった。彼が歌い慣れたニューオリンズの歌とブルーズの数々。日当りのいい窓際でソファに横になって聴いていたら寝てしまった。ニューオリンズに行きたしと思えどニューオリンズは遠し。モロッコにもパリにも行きたいが遠し。

先日、ロケッツの鮎川くんのところに遊びに行った。
鮎川家はストーンズの映像が流れ、ロックンロールやブルーズが流れ、一日中家中がロックしている。そもそもシーナと鮎川くんがずっとロックしている存在やからね。シーナの料理したごちそうや美味しいモツ鍋をいただきながら、音楽の話にはキリがない。鮎川家から帰る時はいつもすごく幸せな気分になっている。ありがたいです。その時にも話に出たエディ・コクラン。
☆Eddie Cochran /The Best Of Eddie Cochran C'mon Everybody
いつも1曲目の甘い「バルコニーに座って」を飛ばしてロックしている曲から聴くけど、今日久しぶりに聴いたらなかなかええ曲やないか・・・と思った。なんでや。年とったか。疲れてるのか。今頃になってええ曲と気づいたか。ギターの音色も全体のサウンドも新しく聴こえる。

1/25
整理できないレコード棚を見ていたら、また同じアルバム(CD)が二枚あった。ウルフや。なんで二枚あるのかはわからん。たぶん、レコード屋でバーゲンで見つけた時に「これ、あったかなぁ・・・あったような・・いや、買おうと思って買ってないような・・」と思い、「まぁ、買っとくか」とゲットして二枚になったんやろな。三枚買ったら、医者に行こ。
☆Howlin' Wolf/Sings The Blues
"Baby Can You Ride With Me Tonight・・・・"Riding In The Moonlight う〜ん、ええなぁ。歌いたい。
このウルフの曲を聴いていたらThe Doorsの"MoonLight Drive"を想い出してyou tubeのドアーズの映像をあっちこっちへしばしドライヴ。ジム・モリソンは大好き。目がイッてる。ギターソロの時にモリソン君はウロウロコンサート会場を歩き回るがその意図が見えんとこがおもろい。昔は私もモリソン君みたいに皮パンを履いていた。皮パンは意外と重い。洗濯に困る。夏暑い。

たぶんモリソン君も好きやったやろ、ジョン・リー。
☆John Lee Hooker/I'm John Lee Hooker
黒人音楽のアルバム・タイトルには時々こういう「私はジョン・リー・フッカーです」というのがあるけど、「私は永井隆です」というアルバム・タイトルにするにはちょっと勇気がいるなぁ。"I'm HOTOKE"というのもなぁ、なんかなぁ。「だから何なんや」って言われそうな気がする。

☆Big Maceo/The King Of Chicago Blues Piano
こういうピアノ弾く人日本におらんなぁ・・・・・。シカゴのアリヨは元気か。
なんと言っても楽器であるピアノが揺れているだろうタッチの強さが素晴らしい。リズムがずっとローリングしている。オーティス・スパンもこのメイシオの影響を受けたというのがよくわかる。"Chicago Breakdown"なんぞはもう極みですわ。

寒くても暑くても文句を言い、ライヴが続くと疲れると文句を言い、ここしばらくのようにライヴがないとなんか体の調子が悪いと愚痴を言い、ギターがうまくならなぁ・・・と凹み、歌詞が憶えられんのは頭が悪くなったからかと凹み。今日の運勢が一位やったとちょっと持ち直すオレはなんや。

夕方、レッド・ツェッペリンをyou tubeで見ていたら止まらなくなった。別にそんなに好きでもないんやけど(ロバート君がいつもお腹出してベスト着てるのもなんかなぁ・・腹冷えるやろ)、バンド全体に強力な躍動感があって、やっぱ全盛期はごいすです。ドラムとベースは無敵のロック艦隊やな。

1/26
☆Marion Williams/Born To Sing Gospel
今日は朝からでかい音でゴスペルを聴く。こういうゴスペルを聴く気分の時がたまにやってくる。
マリオン・ウィリアムズはすごく好きなゴスペル・シンガー。何が好きかって・・とにかく声。相当の音域があるシンガーやけど高音域が聴いていてしんどくない。女性シンガーの例えばマライヤ・キャリーが出すような高音はヒステリーを聴いてるみたいで正直しんどい。たぶん、高音の声質が薄いからやと思うけど、マリオン・ウィリアムズは高音も厚い。
朝からテンション上がっている。
そのままロゼッタ・サープへ。

☆Sister Rosetta Tharpe/The Original Soul Sister
テンションが上がってシスター・ロゼッタ・サープの4枚組に突入。
かしまし娘的ギター・サウンドがたまらん。音がペキぺキや。しかし、ギターのグルーヴごいす!
4枚組の二枚まで聴いたところで・・ちょっと疲れた。

そのちょっと疲れたところに電話。結婚紹介所と墓石のご案内が立て続けにかかってきた。このふたつがグルやったりして・・悪い女と結婚させて墓石買わせたところで・・・う〜ん。年を重ねて疑心暗鬼になっていくおっさんの典型やな。あとは株の取引の電話がようかかってくる。株やるような金があると思われているのか・・・もっとしっかり調べろ!個人情報を。

☆Charlie Haden・Hank Jones/Steal Away
ゴスペルでこのアルバム想い出した。ジャズのベーシスト、チャーリー・ヘイデンがピアノのハンク・ジョーンズとデュオで作ったアルバム。聖歌とスピリチュアルとアメリカのフォークソングが収録されている。
大袈裟ではなく、このアルバムをいまも生きて聴けることに感謝したくなるくらい素晴らしいアルバム。僕にとって大切な1枚。ふたりとも繊細で朴訥、飾り気がなく、これみよがしなプレイは一切ない。残念ながらハンク・ジョーンズは去年亡くなってしまった。

☆Eric Dolphy/Out To Lunch
自分が持っているジャズのアルバムの中でも好きな1枚。ボビー・ハッチャーソン(vib)、リチャード・デイヴィス(b)、トニー・ウィリアムス(ds)、フレディ・ハバードtp)そして、エリック・ドルフィー(as)みんな素晴らしい。不思議な夢を観ているようなイマジネーションを刺激してくれるアルバム。みんなが違う色を出しているのに、水の上に絵の具を垂らしたようにだんだんと混じり合っていく。・・・今日はこの辺りでThe End。

1/27
☆Buena Vista Social Club Presents Ibrahim Ferrer
90年代中頃のブエナ・ベスタのブームの中で知ったこのキューバのお爺さんの歌手イブライム・フェレール。オマーラ・ポルトゥオンドとのデュエット「シレンシオ/静寂」は夢の中にいるような美しい曲だ。
朝の目覚めにはとてもいいアルバム。

レコードやCDもなかなか処分できないが、本も処分できない。今日はもう読まないだろう本を古本として売りに行くため選別しながらボサノバを聴く。ちなみに服や靴はすぐに捨てれるのになかなか本とレコードは捨てられない。
☆The Best Of Astrud Gilberto
キューバから更に南下。高校生に流行っていたボサノバのアストラッド・ジルベルト。"Once I Loved"と"Corcovado"が好きだ。

昼飯が終わってからソファに寝そべり60年代フォーク・ロックのバーズへ。12絃ギターが気持ちいい。
☆The Byrds/Mr.Tambourine Man
このアルバムが出た頃、中学3年だったか、小遣いが少なくてこのアルバムを買えなかった。同じクラスの金持ちの息子がある日、このアルバムを持って学校へ来た時のことをよく憶えている。シングルでヒットしていた「ミスター・タンブリンマン」をラジオで聴いて惹かれていたので「貸してほしい」と頼みたかったが、そいつのことが嫌いで言えなかった。仕方なく、その頃住んでいた名古屋の納屋橋のヤマハでこのアルバムを試聴させてもらった。A面B面とも聴かせてもらい終わって感動していたら、店員さんが嫌な顔をしていた。何故なら僕はほとんど試聴だけだったから。
"All I Really Want To Do"というディランの曲が大好きだ。

バーズを聴いていたらこのバンドを想い出した〜「ニッティ・グリッティ・ダート・バンド」
☆Nitty Gritty Dirt Band/Uncle Charlie&His Dog Teddy
このバンドはカントリー・ロックというカテゴリーに入るらしいけど、もっと幅広い感じがする。時々ザ・バンドみたいだったり、ビートルズみたいだったりすることもあるかなり自在なバンドだ。サウンドが素晴らしい。いま聴いてもまったく古さがない。1970年のアルバムなのに・・・。名曲"Mr. Bojangles"もある名盤。

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今朝のスタートは
☆Syl Johnson/Diamond In The Rough
ブルーズをやっている時のシルも嫌いやないけど、やっぱりこのハイ・レコードの頃がいちばん好きかなぁ・・。ホッジズ3兄弟にドラムのハワード・グライムスのリズム隊のグルーヴはやっぱ落ち着く。ミディアムの8ビートは絶品。1974年製作でプロデュースは巨匠ウィリー・ミッチェル。ハイ・サウンド黄金期。他のソウル・レーベルにはない哀愁漂うスローもたまらん。そういえば娘のシリーナ・ジョンソンはどうしてんのかな・・・きれいな娘や。ふたりで来日してくれんかな。

☆Cassandra Wilson/Sings Standards
カサンドラはすごく好きでほとんどアルバムもってるけど、これは久しぶりに聴くジャズ・スタンダード集。声が好きやから何歌ってもええけど、このアルバムはちょっと刺激がないかな。彼女はやっぱりヤバいトゲをちらっと聴かせてくれる歌がいいんやけどね。"NEW MOON DAUGHTER" "traveling miles"あたりの方が本領発揮かな。
昔、ニューオリンズのライヴで聴いた彼女の"Strange Fruit"はもうめちゃくちゃよくて・・・でも、その歌詞の内容と彼女のMCに白人の客で帰ってしまうアホがおったなぁ。

☆Soul Train 1975
初めてアメリカへ行った頃にかけっぱなしのラジオから流れて来てた曲ばっかり。のっけにオハイオ・プレイヤーズの"FIRE"つづいてAWBの"PICK UP THE PIECES"これはいつ聴いてもかっこええ。それからブラックバード、KC&The Sunshine Bandこれがまた"That's The Way Ah Ah I Lile It♪〜"思わず歌うがな、踊るがな・・・。いちばんディスコに行った頃かな。ロスでこの辺のソウル・ファンク・グループが勢揃いのコンサートに行ったなぁ・・・みんな踊り狂ってた。
このアルバムの最後がステイプルの"Let's Do It Again"・・最高。曲作ったカーティス・メイフィールドも、途中でシブくソロをとるステイプルのお父さんも天国へ行ってしまった・・私にとってソウルのいい時代。メイヴィスがんばれ!

☆Graham Central Station/Release Yourself
Soul Trainで盛り上がって聴きたくなったグラハムへ。1974年か・・周りのベーシストがみんなチョッパーの練習してたけど、いま聴いてもやっぱ本家本元はえぐい。タイトル曲グイグイでんがな。you tubeで見ると運動会みたいなバンドで、みんなめっちゃ元気や。やっぱり、肉いっぱい食べてる感じがする。

☆Ginji James/Love Is A Merry Go round
グラハムのアルバムを棚に収めたら、その横にあったこのアルバムに気づいて久しぶりに聴いた。ジャケ写がアルバム・タイトルにひっかけてメリー・ゴー・ラウンドにジンジちゃんが乗ってる、そのまんまやないか!ジャケット。でも、ジンジちゃん可愛い。声が柔らかくて品があるし、変に高い声とか出さんからええ。何かこの声に包まれて眠りたいような・・1971年シカゴ・ソウルの隠れた名作。でも、ジンジちゃんのアルバムはこれ1枚だけしかない。ライナーを読むと成績優秀の学生で生物学の学位も取ってるから、そっち方面に転職したのかもしれんなぁ。惜しいなぁ・・可愛いし、歌うまいし、頭ええし・・・。

1/29
この日は朝から「笑点」の公開録画に行き、その後新宿をふらふら、レコード衝動買い、そして曙橋461へ飲みに行きワイン飲み続けべろべろで帰還。家聴きはなし。

1/30
☆Aaron Neville/I Know I've Been Changed
昨日買い求めたアーロンの新譜を、朝、早速聴いてみる。ゴスペル・アルバムでいつものアーロン節が聴こえてきていいなぁと思ったのだが、去年リリースされたメイヴィス・ステイプルのゴスペル・アルバムような胸を熱くしてくれるものが何かないな。まだ、一度しか聴いていないので言い切ってしまうのもなんやけど・・。昔、ニューオリンズのフェスティバルに行った時、ゴスペル会場に予定されていなかったアーロンが現れて素晴らしいゴスペルを歌ってくれた。その思い出があったのでこのゴスペル・アルバムをゲットしたのだが・・・。間をおいてまた聴くか。

☆From Barbershop To Doo-Wop To Hip-Hop(アメリカン・コーラスの歴史)
中村とうようさんが選曲、監修されたこのコンピ・アルバムを前から入手しょうと思っていたら、昨日20%オフで売られていたので即ゲット。選曲されている半分くらいは知っているグループだが、あと半分は初めてで名前も知らないグループもある。自分が歌っているブルーズにはほとんどコーラスがないのでコーラスものには疎いのだが、このアルバムはとてもいいナビゲーターになる。

☆Joe Hill Louis/the Be Bop Boy
これは昨日ゲットしたアナログ盤。安かった・・千円切ってた。ジョー・ヒル・ルイスは50年代にメンフィスでワンマンバンドで活躍したブルーズマン。ワンマンバンドとはひとりで同時にいくつかの楽器を演奏するスタイルで、ジョー・ヒル・ルイスは歌とギターとハーモニカとドラムのバス・ドラとハイハットを演奏する。
歌とギターは朴訥だけど(時々アグレッシヴ)グルーヴ感は結構イケイケ。メンフィスの公園で演奏していたそうやけど、ストリートでやっているムードがアルバムにも出ている。なんかずっと聴いていたいような安ぎ感が漂ってる。

☆Earl King/Trick Bag
もう大大大好きなアール・キング。収録されている音源はもっているのだけど、アナログ盤のジャケットを見て衝動買い。ファンキーで本当にかっこいい。しかし、名曲のタイトル曲はじめいい曲を作った人や。もう一回ライヴ聴きたかったなぁ。

☆Guitar Star
マイティ・ジョー・ヤング、マジック・サム、フェントン・ロビンソン、ウェイン・ベネット、ボビー・パーカーなどシカゴで活躍したブルーズマン/ギタリストの50-60年代のコンピ・アルバム。以前、金がない若い頃にやっと手にいれたレッド・ライトニンのこのアナログ・アルバムをあるバーに貸したら紛失されてしまい、新たに昨日買い直した。久しぶりに聴いたが、選曲の妙あり。どのブルーズマンも素晴らしく、実に内容の濃いアルバム。

そろそろ、ツアーも近づき、いやその前にJIROKICHI3Daysか。そろそろいろいろ準備せなあかんなぁ。
「もう如月すっかりついた怠け癖」

萩原兼任さん

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萩原兼任さん
1月21日、名古屋のブルース&ソウル・バー"OTIS"のオーナー萩原さんが亡くなられた。
享年65才。ここ数年、病を患っておられたが本当に残念だ。
萩原さんとは70年代最初の頃からの知り合いで長いおつきあいでした。

70年代の最初、萩原さんは名古屋でブルーズの飲み屋「オープン・ハウス」を開店されていた。
結成したばかりの僕の「ウエスト・ロード・ブルーズバンド」をライヴに呼んで下さったのは72年だったと思う。たぶんそれが最初の出会いではなかっただろうか。
その時、アンプや機材の用意をしてライヴを仕切ってくれたのが当時「オープン・ハウス」の従業員だった近藤房之助だった。
とにかく、房之助はじめブルーズに興味をもった若者たちが「オープン・ハウス」にたむろしており、誰が従業員で誰が客なのかよくわからなかった。
その「オープン・ハウス」では何度もライヴをやらせていただいただけでなく、萩原さんにブルーズのレコードのこともいろいろと教えてもらった。
現在今池のライヴハウス「TOKUZO」のオーナー森田くんも「オープン・ハウス」で働いていたし、名古屋在住の木下くん、横山くんなどミュージシャンだけでなく名古屋近辺でブルーズやソウルを好きな人たちはみんな「オープン・ハウス」に入り浸っていた。そして、萩原さんのお世話になった。
つまり、「オープン・ハウス」がなければ現在の自分がない人たちがたくさんいる。
「オープン・ハウス」が閉店して、現在の"OTIS"を始められて・・・いや「オープン・ハウス」をやっている頃から"OTIS"は始まったのか・・記憶が定かでないが、ずっとブルーズやソウルを愛して店を続けてきた人だ。
その萩原さんの暖かい人柄に心休まるひとときを"OTIS"で過ごした方もたくさんいると思う。
ジュークボックスから流れてくるブルースやソウルを聴きながら、ウィスキーを飲み音楽をはじめいろいろな話をした。しかし、ときに音楽には歯に衣を着せず鋭い意見を言う人でもあった。

"OTIS"でも何度か木下くんとのデュオ・ライヴをやってきた。
そして、いつも酔っぱらった私が帰るときには店の外まで見送ってくれる萩原さんだった。
そろそろ、また"OTIS"で木下くんとライヴをやろうかと思っていた矢先の訃報だった。
葬儀に集まった人たちの中には久しぶりに会った人もたくさんいた。萩原さんが会わせてくれた人たちだ。
あまりに久しぶりですぐには名前を思い出せない人もいた。
そういうみんなを見ていて月日の流れの早さと、それぞれの過ごしてきた時間を思った。
私も年をとったが、最初会った頃はまだ10代だった森田くんや横山くんの頭にも白髪が目立っている。
もうそこにはいないすでに他界した友人、知人のことも思った。
葬儀が終わって「どうしょうか」と言ってる間にぞろぞろとビールが飲める店に移動することが決まった。
昼間からみんな酔って、たくさん話をして、笑ってとてもいい時間を過ごした。
それも萩原さんのおかげだ。
あっという間に陽が暮れて、私は新幹線に乗るために先に失礼した。

出棺の時にオーティス・レディングの"The Dock Of The Bay"が流れ、誰かが「あっ、オーティスだ」と言った。
そのオーティスが流れる、オーティスの歌を愛したマスター萩原さんの店"OTIS"はこれからも続く。
是非、名古屋行かれることがあったら行ってジューク・ボックスの素晴らしい音楽を聞きながらお酒を飲んでください。
素敵なお店です。OTIS→http://sinsakaeotis.jimdo.com/

萩原さん、本当にありがとうございました。お疲れさまでした。
また、"OTIS"で歌います。

上の写真は葬儀でも配られていた数年前に作られた萩原さんのお面です。本当はもうすこしいい男だったかな・・・・。
2011年1月24日

84.ブルースギター大名鑑

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ブルースギター大名鑑(P-Vine Books/blues interactions,inc.刊 ¥3800  原題The Blues Guitar By Rick Batey)
あのギターがどうの、このギターどうのと言うほど腕前でもない私ですが、心の中で密かに欲しいと思っているギターがあと3本ほどあります。しかし、いまあるギターもすべて弾きこなせてもいないのに、また新たなギターなどとおこがましい気もするわけです。
また、福山の和田さんの素晴らしいギター・コレクションを雑誌で見ると羨ましい気持ちになりますが、人間には分相応ということがあるのだと自分に言い聞かせております。和田さんからはコレクションがある「ギターの館」(私が勝手に名付けているのですが)へ来ませんかと何度かお誘いを受けているのですが、以前行ったブッチャー(故浅野祥之)があまりのコレクションのスゴさに半分感動、半分むかつきで帰ってきたことを知っているのでまだおじゃましていません。
和田さんはクラプトン・フリークで現在のコレクションに至っているわけですが、自分の憧れのミュージシャンやギタリストが持っているギターを欲しいと思う気持ちは私にもあるのです。だから、楽器屋さんに行った時はその気持ちを強く自制しているわけです。
そんな折、ブルース・ギター馬鹿にはたまらない本が出版されました。題して「ブルースギター大名鑑」。
この本を買ってから日々ため息まじりに読んで、食い入るように写真をみているのですが、あと3本ほど欲しいと言っていたギターがすでに倍の6本ほどに増えました。
素晴らしい本なのですが、私のような者にはなにか欲求不満を募らせるだけで心に悪いような気がしないでもないのです。でもどうしても一日一回はこの本を手にとってしまうのです。
いろんなブルーズマンが愛用したギターを写真、解説入りで紹介しているこの本ですが、アコースティック・ギターからドブロ・ギター、エレキのギブソン、フェンダーはもちろんケイ、ハーモニー、ステラと言ったちょっとレアなものまで登場してきます。
どのページを見てもとにかくため息しかないのですが、改めてギターという楽器の美しさをつよく感じます。
できればすべてのギターの本物を触ってちょっと弾かせてもらいたいところですが、たぶんそれをしたら欲求不満が頂点に達して人格が破壊されるような気がします。こうして本で見ているくらいがいいのかも知れません。でも、欲しいなぁ・・・・・・・。

古澤良治郎さん

1月12日にドラマーの古澤良治郎さんが急逝された。
最近あまりお会いしていなかったが、新年から「アケタの店」で4日間ライヴをされているのを知っていたのでお元気なのだろうと思っていた。以前は何度かセッションに呼んでいただき楽しいライヴをさせてもらった。しかし、ライヴよりもいろんな飲み屋で酔って喋り合った想い出の方が多い。古澤さんの方が年上なのに僕はあまり年の差を感じず「古澤さん、ブルーズやるんだったらシャッフルもっと練習してよ」と言ったことがある。そういうことを言いづらい先輩もたくさんいる中、古澤さんは何故か遠慮なく率直にものが言える先輩だった。

古澤さんのアルバム「たまには」に収録されている曲"Dancing"が好きで僕が詞をつけて歌ったこともあった。

ドラム・セットの前に座った古澤さんの遺影をお通夜で見た時、いろんなことがあっただろうけど音楽をやる楽しさを古澤さんは満喫し、そしてその楽しさをたくさんの人たちに与え、教えた人だったと思った。
しかし、訃報を受け取って驚いたのはもっと年上だと思っていた古澤さんが65才とまだ60代半ばだったことだ。
わざと老けた容貌にしていた(それの方が女性にモテるから・・)という話も聞いたが真偽のほどはわからない。もし、そうならそれも古澤さんらしいと笑える。でも、本当にモテたのか・・・。

想い出した・・・古澤さんから「ホトケはさ、歌えるのになんでもっといろんなもの歌わないの」と言われ、「いろんな音楽は好きだけどいろんなものを歌おうとは思わない」と言い返していると最後に「だからさ、オマエはダメなんだよ」とダメ出しされたことがある。
でも、いまもう一度古澤さんに会えるなら、言いたい・・・・・「僕はブルーズを歌いたい」と。

ご冥福をお祈りします。ありがとうございました、古澤さん。

2010年〜2011年/旧年から新年に思うこと

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1.blues.the-butcher-590213初DVD"BLUES AFTER HOURS"のリリース
2010年末になってブルーズ・ザ・ブッチャーの初DVDリリースとなった。撮影と編集をしていただいた山田秀人さんと菅原一剛さん、そしてジャケットを作ってくれた木菱くんほかスタッフのみなさんには心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。ブルーズ・ザ・ブッチャーが行っている様々なライヴの核心を見事に捉えた映像になったと思います。 普段、自分の映像をあまり見ない(見たくない?)私が何度も見ているのは映像が魅力的で飽きさせないからだと思います。
このDVDを見ていただくとわかるように私たちbtbは様々な場所で演奏しています。広いフェスティバルやコンサート会場から狭いライヴハウス。お客さんが多いときもあれば少ないときもあり、機材が不十分な時もあれば、音響状態がよくない時もあります。でも、どんな時でもどこでやっても私たちの音楽に向かう、ブルーズを演奏する姿勢はひとつです。これからもただひたすらそのひとつを続けていくだけです。今年もblues.the-butcher-590213をよろしくお願いします。

2.「ブルースハーモニカの扉」のリリース
私がブルーズを長年やっている目的のひとつに、ブルーズという音楽をたくさんの人たちに知ってもらいたいということがあります。
しかし、流行りすたれの激しい音楽の世界でブルーズの素晴らしさを知ってもらう難しさもよくわかっています。その事に関して過去に落胆したことは一度や二度ではありません。
今回、鈴木楽器さんの依頼でKOTEZくんとデュオでハーモニカ付きCDの「ブルースハーモニカの扉」を製作したものブルーズを知ってもらえるきっかけになればと思ってのことでした。価格もハーモニカがついての3500円とリーズナブルです。初めから上手くは吹けないけれどハーモニカはとにかくすぐ音が出ます。その音を少しづつ積み重ねながら、そして楽しみながらハーモニカを吹いてください。そして、次はたくさんの人たちが「ブルースハーモニカの扉」から「ブルーズの扉」を開けてくださることを願っています。ちなみに「ブルースハーモニカの扉」は教則ものではありません。ブルースのハーモニカを吹く楽しさを伝えるためのものです。最初は"Sweet Home Chicago"から始めるとよいと思います。

3.ソロモン・バーク
昨春の来日公演を見逃した人たちは一生の不覚でした。
2010年5月30日ソロモンと同じ野音のステージに立てたことは、ミュージシャンとして本当に光栄で一生の想い出となりました。
しかし、コンサートが終わってみんなで「ソロモン!ソロモン!」とコールして彼を見送ったその4ヶ月後に急逝するとは・・・・。
もう、あのソウルフルで暖かい歌声を生で聴くことはできません。
ライヴに行こうかどうかと迷うときに、「また、来るだろう」「また、観れるだろう」「また、聴けるだろう」なんていう考えは止めた方がいいです。
本当に行きたければ強引に時間を作って、借金してでもライヴには行くべきです。
同じ音楽は二度とは聴けません。
そして、その時その場所で生で聴いた音楽の感動は何年か、何十年か経っても何度も自分の胸に甦り、心を豊かにさせてくれます。

4.ボブ・ディランのコンサート
うちのレコード棚にはまだ「ボブ・ディラン・チロルチョコ」が食べられないまま飾ってある。たぶんずっと食べないと思う。
コンサート前はいままでディランが作ってきた素晴らしい曲がたくさんあり過ぎて「あれも聴きたい」「これも聴きたい」と欲張っていたのだが、コンサートが始まると「バンドをやっている」ディランがかっこよくてそんなことどうでもよくなってしまった。
いままでも何度かディランのコンサートには行ったが、今回がいちばん良かった。誰がうまいとか何がいいかとか、フォークだとか、ブルーズだとか、ロックだとかいう単位の問題ではなくバンドがグルーヴし、それに誘われ会場が大きく揺れていくあの気持ちの良さには正直参った。
存在そのものが偉大なミュージシャンですが、ディラン本人がバンドの一員となっていることが更に偉大でした。

5.キャロル・キングとジェイムズ・テイラーのコンサート
年を重ねて音楽をやりつづけていく美しい姿をふたりに見せてもらいました。武道館であんなにいい音だったのは初めての気がする。JTが絶妙のアルペジオでギターを弾き始めてから最後の1曲までまるでどこかのクラブにいるような気分でした。ロスのトルバドーレで聴きたかった・・・・ワイン飲みながら。
キャロル・キングとジェイムズ・テイラー、そしてバンドとのすべての音と歌がひとつになった豊かな、美しい音楽でした。

6.メイヴィス・ステイプルの新譜"You Are Not Alone"
年々心からいいと思える新譜が少なくなり、中古盤屋でいにしえの名盤を探す昨今です。
たぶん、メイヴィスの新譜"You Are Not Alone"はこの日本では大きなポピュラリティを得ることはないだろうと思いますが、静かにゆっくりと心に沁みていつか名盤と呼ばれるものになると思います。
ここ数年のメイヴィスのアルバムは本当に心打たれるものばかりです。
タイトル曲の「あなたはひとりぼっちじゃないのよ」と語りかけてくる"You Are Not Alone"のような歌はメイヴィスのように誠実な歌手でなければ心には届きません。

7.ボビー・チャールズの死
大好きなミュージシャン、ソング・ライターだったボビー・チャールズが亡くなったのは2010年の1月だった。
ライヴをほとんどしなかった人なので彼の生の歌を聴いた人はあまりいないのではないだろうか。
私も聴けずに終わってしまった。
私の回りには女性よりも男性にボビー・チャールズ好きが多い。
孤独、嫉妬、ささやかな幸せ、ロマンス・・・・彼は男の心の呟きを朴訥に歌い続けた人でした。
たくさんアルバムがある人ではないけれど、どのアルバムにも素晴らしい曲が入っている。とくにベアーズヴィルで作った72年のアルバム"Bobby Charles"は永遠に聴かれる1枚です。

8.渥美清〜司馬遼太郎〜茨木のり子
「風天 渥美清のうた」(森 英介著)には私の大好きな寅さんこと渥美清さんが生前に残した俳句が解説入りで満載されている。渥美さんの俳号は「風天」。映画の寅さん同様に心優しい句がいっぱいあり、いまも時々読んでいる。その中の好きな一句「赤とんぼ じっとしたまま 明日どうする」・・・・ブルーズの歌詞のようだ。
テレビの大河ドラマ「竜馬伝」は一回も観る気がしなかった。しかし、そのドラマのおかげで書店には司馬遼太郎さんの著作がたくさん平積みになっていて司馬さんの作品を読むきっかけとなった。「竜馬がゆく」を手始めに読んだが次の展開が待ち遠しい気持ちで次々に号を重ねて完読した。
「茨木のり子集 言の葉 1」には詩人の茨木のり子さんの詩とエッセイなどが集録されている。茨木さんの名前だけは以前から知っていたが読んだのは初めて。この本には茨木さんの素晴らしい詩と彼女と交流のあった多くの詩人、文学者のことが書かれている。知らない人たちのことをこの本でまた知りたくなってしまった。
ほかにも、我blues.the-butcher-590213のアルバムを製作してくれているP-Vine Records/ブルース・インターアクションズの創始者、日暮泰文さん著の「のめりこみ音楽起業」も興味深く読ませていただいた。ミュージシャンも、レコード会社の人間も、まず「自分の信じる音楽にすべてを賭ける」気持ちがなければならないのだが、いまそういう気持ちを持っている人があまりいなくなったと感じる。

9.弘前BLUES'Nの閉店
弘前のFMアップルウェーブで番組が始まってから2ヶ月に一度ほど収録のために弘前に出向いている。行くたびに楽しみにしていたのは「BLUES'N」を訪れてマスターの正井さんとブルーズを聴きながら話をすることだった。それが昨年12月にBLUES'Nが閉店してしまった。
正井さんは閉店を私に告げたあと「これで終わりというわけではないので・・」と微笑まれたが、「弘前に来てもブルーズを聴ける店がないじゃないですか」と私は抗議した。確かにひとつの終わりはひとつの始まりだが、あの「BLUES'N」の空間やムードに浸ることができないのは残念だ。いや、私より「BLUES'N」の常連さんたちはどうするのだろう。あそこで心休まる時間を持っていた人たちはどこへ行くのだろう。
どこに行っても私のような者が落ち着ける店はどんどん少なくなっている。ありきたりのチェーン店のカフェではなく、私はBLUES'Nのような好きな音楽が流れる店でその店でしか味わえないムードの中でコーヒーを飲み、酒を飲みたい。
私はそういう店で音楽を教えてもらったと思っている。

10.たくさんの旅、たくさんのライヴ、たくさんの人たち
昨年も本当にたくさんの街へ行き、たくさんの人たちに会い、たくさん演奏しました。
体が大丈夫な限りこのままライヴも旅も続けるつもりです。
いろんな意味で自分でも嫌になるくらい不器用な自分なので進み具合が遅いのですが、ゆっくりおつきあいください。
私自身はいつも多くを望まずささやかな喜びがあれば充分な人間です。
今年もたくさんの旅に出て、たくさんのライヴをやって、たくさんの人たちに会いに行きます!

最後に前にも書いたかも知れませんが、私が好きな松尾芭蕉の言葉です。「あまりいろんなことに心を惑わされず、ひとつのことをやり続けていれば、無能無才の自分でも最後にはひとつの道をつくることができる」というような意味だと思います。
『萬のことを心に入れず 終に無能無才にして 此の一筋につながる』

『ギター、ギター、ギターそしてパイプに爪やすり、そしてまたギター、ギター・・・・・』

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☆Albert King with Stevie Ray Vaughan/In Session....(Stax records 0888072318397)
タワーレコードにふらっと立ち寄ったらこのCD+DVDのプロモーション用映像が流れていた。
しばらく立見していたがアルバート・キングが愛器フライングVで結構気合い入れてギターを弾いているシーンが出てきて、これくらい気合い入っていれば「買いかな」と思い購入した。画像もまあまあいい。
しかし、私、もうひとりのスティービー・レイボーンがそんなに好きではない。レイボーンがギターがうまいのは認めるが、何故かずっと聴いていると飽きてしまう。歌も声自体があまり好きではない。もうひとつ言うなら彼が醸し出している人間的なムードが好きになれない。だから彼のアルバムもほとんど持っているのにあまり聴くことがない。
それでこのDVDで改めてしっかり彼を見てみようとも思った。
このDVDは1983年のテレビ放送用のスタジオ・セッションということだが、83年というとアルバム「テキサス・フラッド」でデビューした年。レイボーンはまだそんなに有名ではない。当然だが天下のアルバートの前で緊張している感がある。一方のアルバートはこの時までレイボーンのことを知らなかったらしく、「若造、どのくらい弾けるんだ?うん?」くらいの感じなのだろう。
それが曲が進むにつれて思いのほかレイボーンが弾けるので途中からアルバートが「おおっ、なかなかやるな、オマエ」っていう感じなってくる。
レイボーンが時折コピーしたアルバートのフレイズなんか弾くと、アルバートはちょっとニンマリして「そうか、オレのフレイズ勉強してるな・・・よしよし」てな感じなのだが、その後に「でも、若造・・・違うんだな!」とばかりにギュ〜イ〜ンとえぐいチョーキングをかまして弾き返す。負けじとレイボーンもアグレッシヴに弾きまくるのだが、いかんせんえぐさではアルバートにかなわない。ギターの音色もアルバートの方が私の好みだ。ギターのグルーヴの大きさが違う。アルバートの方が体もでかいがブルーズマンとしてのスケールもでかい。
しかし、セッションが進むとレイボーンのがんばりがアルバートにどんどん火をつけていき、アルバートのギターもテンションが上がっていく。かなり本気モードになったのか途中で椅子に座っていたアルバートがギター弾きながら立ち上がる。テレビに映っているという意識もあるのだろう。ここは若造に負けられないと思ったか・・・過去何度か見たライヴで平気で手を抜いたアルバートの姿は見られない。
選曲は"Born Under A Bad Sign"はじめアルバートがヴォーカルを取る曲が少し多いが、レイボーンの"Texas Flood"や"Pride&Joy"も演奏されている。
しかし、気がつくと「えらい、ギター・ソロが長いなぁ・・」と、延々と続くギター・ソロに途中でだんだん嫌気がさしてきた。
それでも『ギターは続くよ♪どこまでも♪』だ。スモーキー・ヴォイスのアルバートのヴォーカルが好きなのでもっと歌を聴きたいのだが、やっぱりギターが中心になっていく。
「もうギターはええよ」と、すっかりふたりのギターに飽きてしまい、一度見るのやめようかな・・・と思った頃、レイボーンがガンガンにソロを弾いている最中にアルバートが立ち上がって後ろのアンプの方に行き何をするのかと思えばパイプに火をつけて吸い始めた。なんだろ、なんだろ・・・余裕かましてるのか。疲れたのか・・・アルバート。なんか変な感じでオモロくなってきた。しかし・・・・・・いいのかアルバート、いくら相手が若造だからと言って演奏最中にパイプ吸っていいのか。またヒンシュク買うで。ちょっと演奏に飽きたか。わかるわ・・オレもギター・ソロばかり聴くの飽きた。
ひと息ついて今度はパイプをふかしながらギターを弾き始めるアルバート。「若造、まあ、がんばってるけどブルーズはこうやるやんやで!」とばかりに再びぐわ〜ん、ぎゅーんと弾き始める。鼻から煙出しながら・・・。
そして、しばらくするとまたもやレイボーンのソロの時、パタっとギター弾くのをやめて今度はなんと!ニヤニヤ笑ってポケットから爪ヤスリを出して爪を磨き始めるアルバート・・・・。爪やすりかよ!と思わず画面に突っ込んだ私。
パイプ吸って、爪やすり、次はポケットからおにぎりでも出して食べるのか・・・・なんかアルバートの傍若無人ぶりが出てきたなぁ。そこで来日した時に自分のギターのチューニングが狂っているのに、キーボード奏者をにらみつけて結局、そいつをクビにしてアメリカへ帰してしまったあの暴君ぶりを見せたライヴを想い出した。
そして、演奏は相変わらずギター主体で続いているが何やら面白い展開になりそうなのでそのまま見続けた。
しかし、期待していたような我がままアルバートにはならず爪やすりで終わった。(ちょっと残念。ポケットから鼻毛切りでも出して欲しかった・・・・)

最後はディレクターがたぶん事前にこう言ったのだろう−「あのぉ〜、最後にですねぇ、おふたりのことだから当然盛り上がると思いますが、やっぱり盛り上がった感じの絵が欲しいので、アルバートさん椅子からこう立ち上がってノってるぜっていうムード出してもらえますか。最後にギュイ〜〜ンとかましてやってください。ギャラはずみますから・・えっ?打ち上げ?やりますよ!やりますよ!もちろんプリティ・ガールたちも呼んでますよ、もちろんシャンパンもあります。それでですね、アルバートさんが立ち上がったら、レイボーン君も立ち上がってこう・・なんていうのか白熱した感じにもっていってギターバトルになってふたりでガンガン、ゴンゴンに弾いてください。ドスドスにやってください。よろしくでぇ〜す」
最後ふたりは立ち上がり、見事に盛り上がった感じで延々とギターを弾き、レイボーンが弾きまくっているのをギターを降ろしたアルバートがスタジオの隅で観ているというおもろい感じで終わり。ふたりは握手にハグ。めでたし、めでたしで終わった。

改めてギターを延々と弾くブルーズってつまらんなぁと思った。ベンチャーズじゃないんだから、ブルーズはね。とくにアルバートは独特の声とクールな歌いぶりがたまらない魅力なのでもっと歌って欲しい。ギターに関しては私はアルバートに軍配を挙げた。レイ・ボーンはとにかくギターのグルーヴが小さくて固い。アルバートが大きな円をひとつ描くようにギター・ソロを弾くのに比べレイ・ボーンは小さい円をたくさん描いている感じがする。
そしてわかったのは、決定的にレイボーンに欠けているものはブルーズへのダウンホームな感覚だということ。いいブルーズマンはどこかにダウンホームな感覚を持っていると言うのが私の持論だが、やはりレイボーンはイケイケ一本だ。それが疲れる原因かも知れない。彼はやはりブルーズマンというよりギタリストなんだと思う。でも、ブルーズはギター・ミュージックではなくてヴォーカル・ミュージックだからね。
そう言えばタワレコの帰り際にバディ・ガイの新譜も試聴できたので聴いてみた。それがまたギュワ・ギュワ・・ギューン・・・と芯のないふにゃふにゃのギターの音が延々としていた。何を言いたいのどころか、何を弾いているのかさえわからないバディ・・「なんやねん、これ」でした。もちろん買わなかった。ああ、ブルーズのいい歌が聴きたい。
2010年11月18日 記

1920年代に・・・ランブリン・トーマスとオスカー"バディ"ウッズ

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Ranblin' Thomas & Oscar"Buddy" Woods/Texas Knife Slide Guitar Blues(P-Vine Records PCD-5724)
このアルバムはランブリン・トーマスとオスカー"バディ"ウッズという1930年代を中心にほぼ同時代にテキサスから南部一帯で活躍していたふたりのブルーズマンのコンピレーション。ふたりが一緒に演奏しているのではなく、半分ランブリン・トーマスあとの半分がオスカー・ウッズという収録になっている。

まず「ランブリン・トーマス」・・・・・「放浪するトーマス」か・・名前からしていい。街から街へギター持って旅を続けるこういうカントリー・ブルーズマンに男は憧れる。
このアルバムには1928年と32年のトーマスの録音が収録されている。
1928年といえば昭和3年。昭和3年と言えば日本は張作霖事件を画策してより中国への侵略を強く始めた頃。その同じ頃にアメリカ南部をギター持って放浪していた黒人を思い浮かべるとちょっと変な感じがする。
1928年、アメリカは狂騒の20年代<ローリング・トウェンティーズ(Roaring Twenties)>と言われた最後の年。翌29年には大きな落とし穴のような大恐慌がやってくるのだが、それまでの20年代はアメリカの経済が発展しいろんな技術が革新されてテレビができたのもこの頃、ラジオは完全に大衆のものとなり車もこの時代に大衆化する。ニューヨークでは「ハーレム・ルネッサンス」と呼ばれる黒人による文化運動もあったが、南部を転々と放浪していたこのランブリン・トーマスにはまるで関係なかっただろう。彼はどんな風景を見ながらどんな想いで彷徨いつづけていたのか。
生まれはルイジアナだが若い頃からルイジアナ、テキサスあたりを放浪してテキサス・ブルーズの偉人ブラインド・レモン・ジェファーソンとも演奏をしたとか。歌にはそのレモンの影響がはっきり伺える。彼のギターは普通の奏法とナイフの背でスライド・ギターを弾くナイフスライド奏法と両方ある。決して歌もギターもうまいというわけではないが、とてもディープな味わいのあるブルーズを残している。チリチリ・・・とノイズが覆う中、繊細さや豪放さもまじえてプリミティヴな良さが残るランブリン・トーマスのブルーズ。
「とっても寂しいよ、どうしたらいいのかわからないくらい寂しいよ。もし、いい女がいなかったらあんたも寂しいだろうよ・・」(So Lonesome )
押し込めた哀しさが朴訥に歌われている。南部の田舎の泥と石まみれの道をひとり歩いているような映像が脳裏に映る。

「オスカー・ウッズ」はランブリン・トーマスに比べると技巧的にはかなり上手なブルーズマンで曲も多彩だ。ギターのリズムが素晴らしいことにまず気づく。とくにラグ・タイム調の曲で聞かせるグルーヴ感にあふれるギターは実に見事だ。思わず踊りたくなる。しかもその見事なリズムがスライド・ギターの小技も混ぜての仕業だけに驚くばかり。曲も整合性があり緻密に作り込まれている感じがある。都会的な洗練さも持ち合わせていて名人ロニー・ジョンソンを彷彿とさせる曲もあり、本当ならもっと有名になっていてもよさそうなものだが、ずっとルイジアナ、テキサスあたりでやっていたから知られなかったのかも・・・。女性歌手のバッキングなどもやっていたほどだからその上手さを認められて、かなりの人気ミュージシャンだったのだろう。ちょっと小洒落たバーで踊るフラッパーな女性たちに囲まれながらギターを弾くオスカー・ウッズが目に浮かぶ。

ブルーズは同じような音楽形式を取りながらも実に様々なスタイルが作られた音楽だが、このアルバムそれを表している。同じような地域で同じ時代で同じスライド・ギター奏法を使いながらも出来上がっているものはまるで違う。ブルーズという音楽がもつ「自由さ」がその人の「自由さ」をそれぞれに表現している。だからブルーズは面白い。飽きる事がない。

82-「Blues&Soul Carnival」25周年記念コンサート 日比谷野外音楽堂 May 30,2010

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本当にいいコンサートでした。歌っててやっぱり野音は気持ちいいと思いました。僕たち「blues.the-butcher」のプレイも「すごく良かったよ」といろんな方に言ってもらったが、シーナ&ロケッツもガッツン・ガッツンのロックでカッコ良かったし、久しぶりに会ったコーリー・ハリスもやっぱりいい声してました。
そして、ソロモン・バークの素晴らしかったこと!!「オレは昔のシンガーじゃないんだ」とばかりに1曲目から新曲"Nothing's Impossible"ですよ。もちろん過去の"Proud Mary"とか"Cry To Me""Everybody Needs Somebody To Love"も歌ったし、最新アルバムと2008年の"Like A Fire"あたりの曲も入れ新旧とりまぜの圧巻のステージだった。サム・クックの"A Change's Gonna Come"を歌った時には泣いた友達のおっさんがいました。
なんか当たり前だけど「本物の歌」だったし、「本物のソウル」だったし、心から暖まるヒューマンなステージでした。
そして、夜が迫るにつれてスポットライトがくっきりとソロモンを映し出しそれがどんどん神々しく見えて「今日、本当にここにいてよかった」「ソロモンと同じステージに立ててよかった」「盟友鮎川誠率いるロケッツとこの同じコンサートに出演できてよかった」・・・・といろんな想いが頭を巡り、もうビールをどんどん飲んで一緒に歌って、踊って、「ソロモ~ン」と叫んでないと涙腺がやばくなってしまう状態でした。
そして、コンサート終了後、バック・ステージにいるスタッフやミュージシャン、友達と興奮して喋っていると、知人が「ソロモンに会う?」「えっ?会えるの?」「うん、ちょっと待ってて」 ソロモン・サイドのガードが固いと聞いていたので会うのは無理だと思っていたのが・・・。
しばらくするとソロモンの楽屋のドアが開いて「どうぞ」と中に通された。そして、その知人がソロモンに「今日、ソロモンが出る前に歌ってくれたバンドのシンガーだ」と紹介してくれると大きな手が伸びてきて私の手は完全に包まれてしまった。柔らかい手でした。
あまりに急なことでもう舞い上がってしまい。「すすすすす・・素晴らしいショウでした」「「わ、わ、わたし、ずっとあなたのファンです」というのが精一杯。「あのぉ、あなたと写真撮っていいですか」と言うと「もちろん」とにっこり笑顔。それで1枚撮るとソロモンが「君の手を私の頭に載せろ」と言うので「いや、それは・・できません」「いいから載せろ」というので手を載せるとカシャ!と一枚。すると今度はニヤニヤ笑って「君の長い髪を私の頭に載せろ」「ええっ?!いくらなんでもそれはできません」。40年近くずっと尊敬して聴いてきたキング・ソロモンの頭の上に自分の髪を載せるなんて・・・そんなオフザケできるわけないでしょう。するとソロモンが「キャンディ!」と娘さんを呼んで無理矢理私の髪をソロモンのハゲ頭(本当に失礼)に載せてしまいました。撮ってもらいました奇蹟の一枚。しかも撮ってくれたのは写真家菅原一剛さん。このオフザケに楽屋にいた人たちはみんな大笑い。優しくて、面白くて、お茶目で・・・最高の人でした。でも、彼の素晴らしい人間性はステージやアルバムの歌を聴けばすぐに感じます。「ありがとうございました」ともう一度握手をした時に「また、日本に来てください」というと大きな目で「もちろん、来るよ」と言ってくれました。
最後はロケッツのメンバー、ブルーズ・ザ・ブッチャーのメンバー、ファン、スタッフなどたくさんの人たちの「ソロモン!ソロモン!」というコールと拍手の中、車に乗り込み手を振ってソロモン・バークは帰って行きました。
私は家に戻ってからも虚脱状態で眠れなくて、普段は滅多に家では飲まないのにこの夜は焼酎をグビグビ・・・。何度も「よかったなぁ」と言いながら酩酊して眠りにつきました。

「Blues&Soul Carnival」にはWestRoad BluesBandで出て以来何度も出演させてもらっているが、今度のソロモンを迎えた「Blues&Soul Carnival」の25周年記念コンサートはしっかりと心に残るものとなりました。
そして、これから音楽を続けて行く自分の心の支えとなり励みにもなりました。
来てくださったみなさんもたぶん私と同じ気持ちだと思います。そして、いつかまた「あのコンサートよかったよね」ときっとみなさんも言うと思います。
来てくださったみなさん、本当にありがとう!みなさんの声援はステージの私たちにすごく届きました。
スタッフのみなさん、主催のM&Iのみなさん、お疲れさまでした。
そして、キング・ソロモンありがとう!あなたは最高です!

81-"Nothing's Impossible"-Solomon Burke

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☆ソロモン・バークとウィリー・ミッチェルの時代を超えたあまりにもソウルフルなニュー・アルバム"Nothing's Impossible"
もうすぐ来日するソロモン・バークの最新作"Nothing's Impossible"がリリースされた。
プロデュースは1月に亡くなったメンフィス・ソウルの名プロデューサー、ウィリー・ミッチェルだ。
60年代からウィリー・ミッチェルが手がけたアル・グリーンはじめ、O.V.ライト、アン・ピーブルズ、オーティス・クレイ、シル・ジョンソンなどの素晴らしいアルバムは多くの人たちに愛聴され、
ソウルの歴史に輝かしく残っている。
そのウィリーがソロモンと組んで出来たこのアルバムが惜しくも彼の最後のプロデュース作品、遺作となってしまった。
1曲目の"Oh What A Feeling"が流れた途端に彼がハイ・レコードなどで築き上げた独特のバックビートと豊潤で暖かい音が混じり合った懐かしいサウンドの中に私は包まれてしまった。
これみよがしなところがなく、余分なものもなく、じわじわと太いグルーヴで迫ってくるメンフィス・ソウル・サウンドにのってソロモンの包容力のある歌声が始まる。
ウィリーとソロモンが初めてアルバムを作ったとはとても思えないほど歌声とサウンドがうまく混じり合っている。そして、やたら聴く者の胸に沁みる。
そして、愛する人への溢れる想いを"Oh What A Feeling"(ああ、こんな素晴らしい気持ち)と歌うソロモンのソウルがどんどんと大きくなって波のように迫ってくる。
懐かしいサウンドとグルーヴだが古い感じはまったくしない。それはウィリー・ミッチェルとソロモン・バークが現役としてずっと活躍してきたからだろう。生きている音と歌だ。

いまとなっては黒人音楽が多岐に広がってしまいソウルというカテゴリーは主流ではなくなってしまった。
でも、いまでもソウルという場所に新しいシンガーは登場してくるし、カムバックしてくる懐かしいシンガーもいる。しかし、その人たちに何か物足りないものを感じるのは「狙い」が見え透いてしまったり、サウンドの作りがあまりにも安手だったりして深さも広さもないからだ。そういう人たちのアルバムにはなぜか時代を超えていくような常に生き生きした感じがない。
つまりオーティス・レディングのスケールの大きさやO.V.ライトの深さを持ち合わせたソウル・シンガーはこのソロモンを含めて数えるほどしかいなくなったのだ。
本当にSoulあふれるソロモンの歌声を彼のHPで聴いてみて欲しい→http://www.thekingsolomonburke.com/
HPを開いた途端に流れて来るその歌声にあなたの部屋にはソウルがいっぱいになるだろう。
どんな時代にもその人のすべてが生き生きとしたものであれば「古い」ものはなにもない。古くなるのはその人が生きているのに生き生きとしなくなった時だと私は思う。
アルバム・タイトル"Nothing's Impossible"の通り「できないことはなにもない」のだと思う。
そう思いながらウィリー・ミッチェルが何十年もアルバムをつくり続け、その最後を偉大なそして最後のソウル・シンガー、ソロモン・バークに託したのかと思うと胸が熱くなる。
このアルバムをゲットするためにレコード店へいますぐ走って欲しい。
そして、いよいよ今月30日は日比谷野音「JAPANBLUES&SOULCARNIVAL2010~25周年記念スペシャル~」にソロモン・バークがやってくる。同じステージに立つ我blues.the-butcher-590213は本当に光栄に思っている。全力を尽くしていいコンサートにしたい。
本当に多くの人たちにラスト・ソウルマンの素晴らしいソウル・ショーを是非体験してもらいたい!5月30日日比谷野音だ!

詳しくはhttp://www.mandicompany.co.jp/hp2010/live/js10/js10.html

80-Bob Dylan 来日公演 /2010.3.29 Zepp東京

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かってディランは「神」と呼ばれてました。

でも、ステージでMCもなく次から次へ歌い続けるディランは心から音楽を愛し、心から音楽を楽しみ、いつまでも音楽の中にいたいと願っている素敵なミュージシャンのひとりでした。
神ではありませんでした。
でも、彼が常人では考えられないくらい音楽への愛情をとんでもなく深く、広く持っていることを感じたライヴでした。
そして、この夜のライヴをいちばん楽しんだのは恐らくディランだったでしょう。

"Rainy Day Woman#12&35"で始まりました。"Everybody Must Get Stoned"とディランが歌うまでもなく私は彼の歌に最初から最後までStoneしてしまいました。1曲、1曲が本当にロックしてました。

後ろの方で聴いていた私にはディランの表情もステージの感じも何も見えませんでしたが、あの音の中にいるだけで充分幸せでした。

終わった後、一緒に行った人に「いいライヴでしたね」と心から言葉が出ました。

こういう音楽を好きでいてよかったと思った夜でもありました。

個人的ないろんな想いが、会場に流れるディランの声とバンドの音の狭間に浮かんでは消えました。

本編の最後"Forever Young"が胸に迫って、迫って、あふれそうになった時にディランはステージからさっといなくなりました。

多すぎず少なすぎず実に見事な匙加減でした。

誰かが超絶な技を見せつけるでもなく、それぞれは自分の役割を誠実に果たし、それがひとつの大きな音の塊になりディランの歌もそこにすっと混じり込んでいました。みんなが普通のことを普通にやりそれが普通ではない素晴らしい音とグルーヴを作っていました。

寒い春の夜、会場の外で待つこと約1時間。そして、すし詰めの会場の中で約2時間スタンディング。腰がつらかったことも忘れないでしょう。

大好きな"Just Like A Woman"が聴けなかったことが心残りです。

Tシャツ、ストラップ、そしてアルバム・ジャケットが包装紙になっている話題のディラン・チロル・チョコと三点購入。チョコを見ながら我がバンドでも何か菓子類を作るか・・・としばし考えました。例えば、コテツ君の顔が描かれている油で揚げた大判せんべい(コテセン)とか。沼澤君のドラムが描かれたどら焼き(ドラムが上手くなるドラドラ焼き)とか。中條君の好きなゴーヤを使ったゴーヤ・チップス(ナカジョニー・チップス)とか。しかし、ディランのチョコは意外だったなぁ。