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永井”ホトケ”隆/tbt(tRICK bAG tRIBE) No.34
A Happy New Year 2003

#黒人伝統芸能衣装:新年早々久しぶりに懐かしいものを見てしまった!!
1/13.14に六本木の「スウィート・ベジル」で元スピナーズ(The Spinners)のリード
・ヴォーカル、GC. キャメロン(Cameron)のライヴがあった。スピナーズは50年代
後半にデトロイトの高校生5人によって作られたグループで、61年にプロとして活動
を始めたときに「スピナーズ」と正式に命名された。マイナー・レーベルから出し
た"That's What Girls Are Made For"という曲がトップ10に入ったが、60年代中頃
に所属会社が当時飛ぶ鳥を落す勢いの「モータウン・レコード」に買収されモータ
ウン所属となった。この時期にグループのリード・ヴォーカルになったのがキャメ
ロン。60年代中-後期モータウンには「テンプテーション」はじめ「フォー・トップ
ス」そして女性グループの「シュプリームス」「マーサ&ヴァンデラス」などチャ
ート上位に登場するコーラス・グループがひしめき合っていた。モータウンという
最先端のレコード会社と軋轢があったものの彼等は"I'll Always Love You"
"Truly Yours" などをヒットさせ、70年にはスティービー・ワンダーが作ってくれ
た"It's a Shame" も大ヒットした。しかし、グループの不満は続き、とうとう72年
に彼等は「アトランティック・レコード」と契約。この時にキャメロンはグループ
を辞めリードはフィリップ・ウェインになった。その後70年代初めから中期にかけ
てディスコ・ダンスが大ブレイクしていく中、そのサウンドにファンク・テイスト
を強く注入したスピナーズは"I'll Be Around," "Could It Be I'm Falling in
Love," "One of a Kind (Love Affair)," "Ghetto Child," "Rubberband Man" など
のヒットを連発し、「クール&ザ・ギャング」「ブルーノーツ」「オージェイズ」
「シャイ・ライツ」「ドラマティックス」「デルズ」など・・群雄割拠の70年代黒
人ソウル・グループ戦国時代の代表的なグループのひとつとなった。まあ、僕が聞
いていたのはそのあたりまでで、80年代以降はほとんど聞いていない。お薦めアル
バムはキャメロン在籍時代のものなら”2nd Time Around”。アトランティックに移
籍した1枚目”フィラデルフィアより愛をこめて」も大ヒット・アルバム。後は「コ
ンピレーションの帝王」”ライノ・レコード”の 「The Very Best・・盤の
Vol.1&2」かな。さて、話を頭に戻すと、キャメロンがスウィート・ベジルのステー
ジに登場した途端、わたしゃ椅子から転げ落ちそうになった。真ブルーの光り生地
スーツに真ブルーの靴、しかもそのスーツのジャケットの真ん中から下にかけてビ
ーズなどのキラキラ素材による刺繍、縫い込み。「そんなん、どこで売ってねん!
?」と大阪なら突っ込みたくなる懐かしい「60-70年代ソウル・シンガー・定番型ス
ーツ」。間違いなく「一点もの」だろう。あれが大量生産されユニクロで扱われる
ようになることは絶対にない。もし、あなたがソウル好きで、キャメロンのような
ソウル・ファッションを着る無謀さを持っているならニューオリンズへ行ったらフ
レンチ・クォーター近くの「ソウル・トレイン」という店を訪ねるべきだ。はじめ
て「ドンキ・ホーテ」を訪ねたとき以上のテンションがあなたを襲うだろう。私は
その店で勇気をふりしぼり、メチャ派手な大柄絵つきの「マイク・タイソン」のTシ
ャツを買ったが、一度しか着ないままタンスで眠っている・・たぶんいまのまま永
眠になるだろう。しかし、キャメロンの歌は抜群だった。まさに大人のソウルであ
り、円熟の境地の歌だった。振り返ってみると彼がスピナーズのリードをしていた
60年代中後期から70年代のはじめまでがソウル・ミュージックに「歌」が毅然とし
て在った時代だった。ダンス・ミュージックでありながら、「聴く」音楽としても
楽曲の良さ、コーラス・アレンジの工夫などに各グループ、シンガーの個性があっ
た「スウィート・ソウル」な時代だった。
#Tempsの閉店:その「スウィート・ソウル」を知り尽している男、六本木のソウル
・クラブ「テンプス」のオーナー、川畑氏も私のとなりでキャメロンのファッショ
ンに「ホトケ!これだよね!」と言い、笑い、転げ落ちていた。しかし、残念な話
だが、川畑氏がずっと経営してきたその「テンプス」が昨年の末に閉店してしまっ
た。ジェイムズ・ギャドソンやデヴッィド・Tと飲んだことや「ピット・イン」の演
奏後にフラッと寄ったこと、友達の結婚パーティをやってもらったこと・・いろん
な想い出が「テンプス」にはあるが、音楽を聞きながら酒を飲み本当にソウル、
R&B、ファンクに精通しているが、押し付けのない川畑氏の話が私には店を訪ねるい
ちばんの楽しみだった。彼が「ない」と言ったことはないソウルのレコード、CDの
量と各アルバムに対する知識にはなんども感服した。でも、僕と同じようにロック
から黒人音楽へという道を辿った彼には変なコレクター趣味はなかったし、批判も
ストレートに言った。彼所有のシングル盤コレクションから編集してくれた「
Deep Soul」と名付けられたテープは本当に私の「宝」。いつも私が帰ろうとする
と私の大好きなエスター・フィリップスなどを流すので、帰りが閉店時間の5時にな
ることもよくあった。朦朧とした、でも幸せな気分で六本木の交差点を渡ったあの
感じ・・・。またどこかで店を出しなよと言う私に「少し休ませて」と言う川畑氏
。とりあえず「お疲れさま」。
#今年もツアー:「テンプス」はソウル・グループ「テンプテーションズ」からネ
イミングされたものだが、名古屋のソウル・バー「オーティス」はオーティス・ラ
ッシュか、オーティス・クレイか、それともオーティス・スパンか、ジョニー・オ
ーティスというのもある。答えは偉大な「オーティス・レディング」。その「オー
ティス」で2回目になるライヴを1/18名古屋の元アップ・タイトのギター木下和彦と
デュオでやった。とにかく店がカウンターだけなので狭い、狭い。が、店のムード
はすこぶるいい。前夜、大阪でポール・ジャクソンたちと夜更かしして疲れていた
が、元アップタイトのVo.酒井が遊びに来て一緒に歌ってくれたのでパワーが出た。
仕事など様々な理由から酒井も木下も一時音楽から遠離っていたが、ここ数年また
名古屋のライヴ・シーンに戻ってきた。「アップ・タイト」の唯一のアルバムは僕
がプロデュースしたものだったし、彼等とはツアーにもかなり出かけた。ふたりと
もある意味では真面目な故に音楽から離れざるを得なかったと思う。酒井は同じヴ
ォーカリストとして僕が信頼する少ない歌手の中のひとりで、その歌を聞けば彼の
音楽への真摯な態度と真面目な人間性がわかるはずだ。ふたりともどんなペースで
もいいから続けて欲しいと思う。「オーティス」は以前、今池にあった「オープン
・ハウス」のマスターが出した店だが、彼とももう30年近い付き合いになるがいま
では店で息子さんが働いている。「オープン・ハウス」は若き日に近藤房之助が働
き、歌い、やんちゃしていた店であり、現在今池にある「TOKUZO」のオーナーとな
った森田も働き、音楽を始めた店であり森田がやっているグループ「バレーボール
ズ」もそこから生まれた。現在、東京で歌っている女性シンガー、ルースも木下た
ちと名古屋で歌っていた。1/16に奈良市「Never Land」という店ではじめてライヴ
をやった。どういう訳か奈良県と山口県にはあまり縁がなく、奈良に行ったのは修
学旅行とレコード・デビューする前のライヴに1回、それだけだ。今回の「Never
Land」では塩次とデュオだったので先に出た地元のバンドの人達にも入ってもらっ
てリハもしない、突然のセッションを何曲かやった。彼等は面喰らったかも知れな
いが、こっちはおもろかった。開演前に塩次と街をぶらぶらしていたらやっぱり「
奈良漬け」の店が目につく。いまは瓜だけでなくいろんな奈良漬けがあり、それ見
た塩次「なんでも奈良漬けにしおんなぁ・・」翌1/17は大阪ビッグ・キャットで、
メンバーも久しぶりの小島良喜、ファンク一番正木五郎に大西真のリズム隊、そし
て伸ちゃんと安心してやれるメンバーで、演奏の内容は深く濃いものだった。そし
て、その後近くの「ネストサルーン」でポール・ジャクソンとレニー・カステロが
セッションをするので呼ばれて行った。元アース・ウィンド・ファイヤーのギター
、ジミー・グラハムも久しぶりに来ていた。ポールに会うといつも「やあ、ホトケ
!」とハグされるのだが、1ステージ終わり興奮していたのかハグにメチャパワーが
あってちょっと身体が痛かった。なかなかファンキーにならないお客さんに対して
ポールは最後に「こんなにグルーヴしてんのに・・」と客を立たせたが、日本人に
は濃過ぎるのか??
#故チャー坊の遺稿集:「村八分」のVoだった故チャー坊(柴田和志)の遺稿集が
出版された。著者は柴田和志になっているが、監修はチャー坊の姉、吉村邦代さん
と実兄の次男さん、そして最期までつきあっていたともこさんという方の3人で、恐
らくこの方たちの尽力で出版に至ったのだと思う。出版社は飛鳥新社。400ページ近
い厚い本には70年代に「村八分」でレコーディングされた詞から最期直前まで歌お
うと書いた詞、散文、手紙、数少ないインタビューに残された記録、バイオ、デイ
コクグラフィー、写真がいっぱい。CDもついている。私はかって表層的な音とアク
ションだけでパンクした精神など微塵もない日本のパンク・バンドに嫌気がさして
、「村八分こそ日本で唯一の真のパンク・バンド」と呼んだが、芸能と呼ばれる領
域から一線をひいて日本人としてのアイディンティティーを見つめ、オリジナリテ
ィある詞とサウンドを「村八分」はもっていた。私は京都の少し先輩のミューシジ
シャンとして歌そのものの影響は受けなかったが、チャー坊のつくる詞の中には共
感するものがたくさんあったし、何度か見た「村八分」のライヴ(客と喧嘩になっ
て途中で終わることも多々あったが)は70年代のロックバンドの中で唯一無二の「
かっこいい」個性があった。そう、現実から離脱した「かっこよさ」が私が愛する
音楽には必要なことをチャー坊を見て確認したと思う。72年私が「ウエストロード
」で村八分の京都会館でのコンサートへの出演依頼をチャー坊から受けた時の「前
座みたいになって悪いけど・・」という彼の言葉と、コンサート終了後の「おおき
に」という小さな声での一言の挨拶・・何度か会ったがいつも言葉は少なくしっか
り憶えているのはそれだけ。常習していたドラッグにやられて私と同じ年なのに
43才で亡くなった。ジャンキーである彼の話ばかりが音楽の世界だけでなく、聴く
人達にも広まり彼の音楽の話はそっちのけだったことに私はずっと嫌な想いをもっ
ていた。しかし、大阪毎日放送ラジオの「大阪ブルーズ・スピリッツ」のDJをやっ
ていた時に「村八分」をOn Airでき彼の音楽について話できたことは嬉しかった。
最初「村八分という名前自体が差別用語だ」というアホな見識が放送界にはあるら
しく、私がOn Airするまで「村八分」はどこの放送局からも10年近く放送されてい
なかった。しかし担当ディレクターはじめ毎日放送の人達のバックアップでOn
Airできたことに感謝している。しかし、チャー坊の詞の中にも差別用語が多々ある
と・・途中でフェイド・アウトしなければならない曲もあった。だが、よく読めば
彼は自分自身に対してその言葉を放っているのであり、ハンディ・キャップのある
人達を揶揄しているのではないことがわかるのだが・・・世間には安い正義感を持
ち込んで「挙げ足取り」が好きなアホが多くて困る。チャー坊が亡くなってからす
でに10年。「村八分」のコンサートに「ウエストロード」で出たときから30年とい
う歳月が過ぎた。この遺稿集や、残されたアルバムはチャー坊を知るまた「村八分
」を知る手がかりでしかない。いつも私が言うように音楽は自分の耳で生で聴かな
ければ真から感じることも、知ることも、愛することもできない。そして、何年か
経って思い出す時にアルバムは思い出すきっかけになるが、真から胸を覆い尽すの
は心の底からフラッシュ・バックしてくる自分が生で聴いた時の音だ。
<スケジュール>
1/29&30高円寺Jirokichi/「ブルーズ鏡開き2Days」29/浅野祥之g 友成好宏key 松
原秀樹b 正木五郎dr  30/森園勝敏g 石井為人key 岡 雄三b 上原裕dr 永井ホトケ
隆vo,g
2/5船橋「月」Blues Paradise/中野靖之(g)上村秀右(g) アルバート・キング特集
2/6荻窪ルースター「Sweet R&B Juke Box」Leo vo.小堀正g.ヤンシーp.永井ホトケ
隆(vo,g)
2/8水戸ブルームーズ/Blues Paradise/中野靖之(g)上村秀右(g)永井ホトケ隆(
vo,g)
2/19京都「拾得」30周年記念ライヴ 塩次セッションのゲスト
2/20大阪塚本ハウリンバー 塩次+ホトケのブルーズ・デュオ
2/21名古屋 未定 2/22名古屋/エムズ 2/23名古屋/J.B STUDIO
2/26高円寺Jirokichi森園勝敏g 大西真b 松本照夫dr 八木のぶおharp.ホトケ
2/28横浜Stormy Monday/松川純一郎(Vo,G)バンドのゲスト出演
#各ライヴの問い合わせ先:船橋「月」0474-24-0706 高円寺
Jirokichi/03-3339-2727 荻窪ルースター/03-5347-7369 水戸ブルームーズ
/029-231-8955 拾得075-841-1691 塚本HOWLIN' BAR/06-4808-2212  横浜
Stormy Monday/045−664−2085 名古屋の3daysはこちらへ J.B
STUDIO/052-6931-1966



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