MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.11




2004年夏休みのアルバム

1.Johnny Winter/Johnny Winter(Sonny Music Direct/MHCP398) 
 最近、体調不良が伝えられているジョニー・ウィンターの1969年に発表されたファースト・アルバムが、ソニーから再発されている。昔、持っていたアナログ盤を友人に貸して返って来なくなって早20年。戻してもらってないアルバムやビデオがかなりある。時間が経ち過ぎたとは言え、「返してくれ」と言えないのは、何故か?別れ際、「それオレのだけど・・・」と言えなくて、別れた女に持っていかれたアルバムをまた買う時の虚しさを知れば、君も一人前の大人だ。何?そんな大人になりたくないって?まあ、言えてる。
ジョニー・ウィンターはアルビノ(先天的に身体の色素がない病気)で、その為の薬に日本で許可されていない成分が入っているとかで一度も来日したことがない。
白人の有名ギタリストで来日していないのはこの人くらいだろう。私はアメリカで2度彼のステージを観たが、最初はレコード以上のスピードとアグレッシヴさに口を開いたままステージが終ってしまった。しかし、久しぶりにこのアルバムを聴いたが、やっぱり口が開いたまま3曲目くらいまでいってしまい、出た言葉が「アホちゃうの!」(ええ意味ですよ)。曲はブルースのカヴァーとブルースのオリジナル、そしてレイ・チャールズの"Drown In My Own Tears"など。このデビュー当時、「100万ドルのギタリスト」(ソニーが100万ドルの契約金を払ったらしい)というキャッチが彼についていたが、ブルース・ギターに関してはスライド・ギターも含め様々なギター・スタイルをすでに自分のものにしている。この時24才。彼はブルースギタリストの宝庫、テキサスの生まれで11才くらいからブルースに魂を埋めている。同じアルビノの弟のキーボード奏者、エドガー・ウィンターとふたり、幼い頃はその病のため近隣の子供たちからはひどい差別を受けて育ったという。そのふたりがブルースに出会い、家の中でひたすら練習した姿を思い描くことができる。このデビュー・アルバムはいま聴いても色褪せていないし、これからもずっと色褪せることないだろう。彼がデビューしてから約10年経って、同じテキサス出身の亡きスティーヴィー・レイボーンがデビューするわけだが、そのレイボーンを初めて聴いた時、私の胸によぎったのはこのジョニ−・ウィンターだった。そして、今回初めて気がついたのだが、このアルバムのベーシストは亡きレイボ−ンのバンド、「ダブル・トラブル」のトミー・シャノンだった。ドラムはアンクルジョン・ターナー、他には偉大なウイリー・ディクソン(ウッド・ベース)、ウォルター・シェイキー・ホートン(ハープ)、弟のエドガー(キ−ボ−ドとホーンアレンジなど)が参加している。ジョニーはまだ60才、身体が心配だががんばってやって欲しい。

2.Now Or Never/21C-B-BOYZ (21ST CENTURY BLUES RECORDS/21CB-CD-2108)
 現在、公開中のブルース映画「ソウル・オブ・ア・マン」でブラインド・ウィリー・ジョンソン役をやっているクリス・トーマスの新譜と言いたいのだが、実はこの21C-B-BOYZというのはギターと歌のベイビー・ウルフとラッパーのマイセルフという人のユニット(この言葉が嫌いなんですが・・)だ。しかし、曲はほとんどクリスが手掛け、ラップもやりギターも弾き、プロデュースも録音もミックスもクリスがやっているのだから、クリス・ト−マスの新譜だろう?なんかややこしいことしてくれるなぁ。80年代半ばにデビューしたクリス・トーマスがやってきたことは「ヒップホップ・ブルーズ」、一言で言えばヒップホップとブルーズの融合だ。私も自分のソロ・アルバムで1曲その融合を試みたことがあるのでこの人には大いに興味があるのだが、なんかすっきりしないアルバムだ。「ブルース&ソウル・レコーズ」の58号のアルバム・レヴュ−で、小川豊光というライター氏が「今世紀始まって以来、最も重要なブルース・アルバム」とか70年代のジェイムズ・コットン・バンドと同様なエポック・メイキングな作品とえらい持ち上げているが、そんな大層なものじゃないだろう。例えばコットンバンドの名盤「100%コットン」と比べてみると、「100%コットン」にはビートとサウンドに明らかな新しさがあった。例えば"Boogie Thing"にしても"Rocket 88"にしても、そのブギ・ビートにはかってなかったタイトさとタフさが感じられた。「完全に」ではないが、「どこか新しい」70年代製のブギだった。そして、それを生かすためのサウンドも「シカゴブルーズ」でもなく「スタックス」でもない、「どこか新しい」サウンドだった。私はリアルタイムで76年にロスでこのコットンバンドのライヴを観た。圧倒的なパワフルさ、アレンジの斬新さに満ちていたが、やはり何よりも鉄壁のビートがこのバンドの要だった。それはすでにキャリアのあるコットンそしてギターのマット・マーフィと、若いリズム隊ベースのチャールズ・カームスとケニー・ジョンソンとの融合から生まれたリズムとサウンドだった。とくに若いリズム隊は新しいブルーズ・ビートのとらえ方をして、自由に12小節を泳いでいた。そして、その自由を与えるコットンとマーフィも素晴らしかった。しかし、この「Now Or Never」には新しいビートもサウンドもない。ドブロギターでシャッフルを刻み、それに乗ってラップする曲があるが、そのドブロのビートにもサウンドも遠い昔のものだ。サン・ハウスの"Death Letter"のカヴァ−なんぞペラペラの安物ブルースで、数年前に発表されたカサンドラ・ウィルソンのカヴァーの方がもっと斬新で、しかもソウルフルで数倍いい。結局、ビートに関してはトラッドなブルースものはトラッドにやりラップだけのせた感じ。ヒップホップものもいままでどこかで聴いた打ち込みビートで斬新さなんかない。これのどこが「今世紀始まって以来、最も重要なブルース・アルバム」なのか私にはわからない。新しいビートをつくりたいなら、少なくとも安手の打ち込みはやめて人間のメンバーを入れて考えた方がいい。ジェイムズ・コットンは「バンド」だったが、これは「ユニット」という中途半端な集合体だからこうなったのだろう。私にとっては「今世紀始まって以来、最もなんだかなぁ・・のブルース?アルバム」だった。

3.HAVE A LITTLE FAITH/Mavis Staples(P-VINE RECORDS/PCD23547)
 愛するメイヴスの待ちに待った新譜だ。長く神に捧げられた彼女の声が少しづつ出にくくなっているのは確かだ。しかし、その難点をカヴァーしたプロデュースと彼女自身がそれを工夫した歌唱がある。歌手は若死しない限り、年を取れば声が変り、パワーもなくなってくるのは当たり前で老化しない歌手などいない。それでも昔のままで押し通そうとする歌手と少し歌い方を変えていく歌手がいる。メイヴィスや最近のB.B.キングは後者で、微妙だが少し歌い方を変えている。しかし、彼女の地響きするような低音の魅力はこのアルバムでも生きている。この声がもう好きでたまらない。一晩中、耳元でウィスパーしてもらいたい。この夏のお薦め盤で
した。

4.genius loves company/ray charles (ビクター・エンターテイメント/VICP-62808)
 レイ・チャールズの最後のアルバム。全編ゲストを迎えてのデュエット曲。何も言うことはなく、最後まで素晴らしくソウルフル。死が近くなった時にこれだけの歌を残すことができるシンガーがどれくらいいるだろう。
レイもメイヴィスと一緒でもう声が好きなので何を聴いても嬉しくなってしまうのだが、私にとってはB.B.とのデュエット"Sinner's Prayer"が一番印象的だ。若き日にレイがバックでピアノを弾いていたローウェル・フルソンの曲であり、フルソンはB.B.にとってかってのアイドルだ。グラディス・ナイトとのゴスペル"Heaven Help Us All"も素晴らしいし、ナタリー・コールとの"Fever"もジョニー・マティスとの"Over The Rainbow"好きだ。レイの"Over The Rainbow"は"Ingredients In A Recipe For Soul"というアルバムに入ってるので、是非そっちも聴いてみてください。アルバム自体が家宝ものの素晴らしさです。しかし、レイの声がもう生で聴くことができないのは、ほんとにつらい。

5.REWIND/Ricky Fante (Virgin Records Music From EMI/7243 5 84403 0 0)
 リッキー・フォンテはサム・クック、マーヴィン・ゲイに匹敵するイケメンだと写真を見た最初に思った。久しぶりに見たソウルのイケメンだ。ヨン様なんて目じゃない。レコード店で流れていたのを聴いて、「おっ、声もええやんか。久しぶりの鯛か!本まぐろか!」と大いに期待しながら家で聴いたのだが・・・途中からなんかイワシどころか「たたみイワシ」みたいに思えてきた。確かに声は顔と違ってシブイ。しかし、なんか軽い。サウンドの感じは曲によっていろいろあるのだが、1曲目のバラードなんかサザン・ソウルからの音作りで私好みなのだが、何か違う。
みんなで一生懸命それ風に作ったという作為が見えなくもない。25才でワシントン生まれだって。ほんとにこいつ、こういう音楽が好きなのかなぁ?もし、ほんとに好きだったら友達いないだろうなぁ・・・だった周りはたぶんみんな「ヨーヨー」
のヒップホップ野郎だろう?
歌は熱そうなんだけど、偽温泉みたいに源泉じゃないんだなぁ・・これが。源泉の若いソウルを聴きたいと思ってこの手のアルバムを買うんだけど、温度が足りない。
いろんな工夫してヤカンで沸かしたお湯を入れるんだけど、長い間聴いてきた耳にはすぐバレる。これじゃほんとのソウルの湯治にはならん。ほんとの熱いソウルが欲しい!1ヶ月くらい自分のソウルが癒される湯治場になるようなやつが・・。

6.Right Where I Belong/Willie Walker And The Butanes(One On One Records/CDONO 761955)
 ウィリー・ウォーカーは毎年行われている「ブルースカーニバル」の司会をやっている後籐ゆうぞう君をやや引きしめた様な顔の黒人のおっさんだ。バックはサザン・ソウル風味で定石通りのリフ、オブリガード、ホーンアレンジ、コーラスアレンジで「おっ!」という新しさはなく、途中から曲の展開も見えてしまうが嫌な感じはしない。さて、ウィリーおっさんの歌だが、歌い方はO.V.ライトあたりから影響を受けているのは間違いない!しかし、声そのものはジョニ−・テイラーに似ている。ジョニ−の声をもうすこし詰まらせたような声だ。だが、O.V.の歌がもっている、人をどん底に陥れるようなディープさはないし、ジョニーほどの粋な説得力もない。でも、すごく心こめて歌っているのはよくわかる。途中からちょっと飽きてしまったので、数日経って残りの曲を聴いたら前回より良く聴こえたので、何回
か聴けばよくなっていくのかも知れない。

.TO TULSA AND BACK/J.J.Cale (Capital/ 7243 5797862 0)
 J.J.ケイルは予想通りにいつも通りだった。今年2004年のリリースの正真正銘の新譜だが、79年の「5」あたりと比べてもこれと言った変化はない。曲が新しいだけで、サウンドもギターも歌も何も新しく刺激的なものはなく、いつも通り。しかし、これがJ.J.だ。夏の昼下がりソファに寝そべって聴いていると、必ず5曲目には眠りに入れるという私にとってこの夏、格好の誘睡眠盤だった。でも、最近ほとんど聴かなくなった(特に日本では)この「ゆるいロック」は実に気持ちよく、貴重だ。血管むき出して、大音量で、ギターかきむしるだけがロックやないよ、若造!
魂がロックン・ロールせんと!

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