"Do You Like Good Music♪Sweet Soul Music♪"と始まるアーサー・コンレイの大ヒット曲"Sweet
Soul Music"は、最初の数小節で私の気持ちをハイにさせてくれる。踊り出したくなり、そして一緒に歌いたくなる。理屈なしに私を幸せにしてくれる素晴らしいソウル・ナンバーだ。その"Sweet
Soul Music"を最初に聴いたのは70年代最初で、アレサ・フランクリンやオーティス・レディングなどアトランティック・レコードのソウル・コンピレーション・アルバムだった。元々は"This
Is R&B"というアルバム・タイトルだが、日本盤タイトルは「これぞR&B」。ジャケットはボロボロになり盤もキズだらけだがいまも私のレコード棚にある。そして、どういう訳か"Sweet
Soul Music"は日本語のタイトルが「レッツゴー・ソウル」になっていた。「レッツゴー・ソウル」なんてタイトルにしないで「スウィート・ソウル・ミュージック」の方が数段カッコいいのに。たぶんその当時「レッツゴーなんとか」というのが流行っていたのだと思う。
そのアーサー・コンレイのライヴCDとDVDが1枚ずつ入っているのがこのArthur Conley&The Sweaters Recorded Live
In Amsterdam。CDはタイトルにあるようにオランダのアムステルダムでのライヴで1980年のものだ。バック・ミュージシャンのクレジットには私の知っている名前はない。恐らく地元のミュージシャンたちだと思う。ドラム、ベース、ギター、キーボードというリズム・セクションに3管のホーンズとふたりのコーラスという典型的なソウル・バンド編成で、60年代ソウルのサウンドを踏襲したなかなかしっかりしたバンドだ。
さて、アーサー・コンレイの歌だが同封されているDVDのインタビューでも語っているように、彼は歌手としてもライヴ・パフォーマーとしてもサム・クックとオーティス・レディングに強く影響されている。2曲目のYou
Send Meや7曲目のTwisting The Night Awayなどは一瞬サム・クックと間違うほどだ。そして、サムやオーティスがライブでそうであったように彼も1曲1曲全力投球だ。そして、途中でこのアルバムのサウンドの響きがあのサム・クックの名ライヴ"Live
At Harlem Square Club"にそっくりなことに気づいた。意識してそういう音作りにしたのかも知れない。約1時間サム&デイヴの"I
Thank You"、ウィルソン・ピケットの"634-5789"、オーティスの"The Dock Of The
Bay"や"FA-FA-FA-FA-FA"など、「アーサー・コンレイと汗っかき達(Arthur Conley&The
Sweaters )」は60年代のスウィート・ソウルの時代に私たちを連れていってくれる。Good Old Musicと言うがこれはOldではない。ここでのアーサーの歌は生き生きとしていて、パワフルで、懐かしのではなく「今」の音楽だ。何ひとつ古いなんて思わずに60年代からずっと熱くこれらの曲を愛し続け歌い続けたアーサー・コンレイの幸せが伝わってくる。自分が古いと思わなければ、例え100年前の音楽だってその人にとってはNEWなのだ。
恐らくこのアルバムはライヴをそのまま何の編集もせずにアルバムにしたものだと思う。前半から全力投球のアーサーが後半にやや声が嗄れてきているのがわかる。それでも最後まで高いテンションで押し切るところはすごい。しかし、疑問がひとつ。何故かこのライブCDには彼のいちばんのヒット"Sweet
Soul Music"が収録されていないし、他のヒット"Funky Street"や"I Can't Stop"も入っていない・・・なんでや? "Sweet
Soul Music"を一度聴いてみたい方は同タイトルの彼のアルバムを探すか、アトランティック・レコードの60年代ソウルのコンピレーションを探せば必ずと言ってよいほど収録されているので是非。
70年代に入るとレコーディングもステージも減ってしまった彼は1975年にイギリスに移住し、その後ベルギーで数年過ごした後80年にはオランダに定住している。だからこのアルバムがオランダの首都アムステルダムで録音されているのも納得できる。そして、何か内面的な大きな変化があったのか法律上の名前をリー・ロバーツに変えていて、88年リリースしたアルバム"Soulin'"も「リー・ロバーツ
と汗っかき達」いう名前で出されている。オランダに定住してからは事業家としても成功し、レコード会社や出版社を含むいくつかの会社を立ち上げている。その中のひとつがSweat
Recordsと言い、やっぱり「汗」なんだと笑えた。
DVDの方は彼がインタビューに答えながら思い出の曲をピアノを弾いて歌ったりしている。そのリラックスした自然な姿が本当に楽しそうで嬉しそうで見ていてこちらも幸せな気分になる。しかし、彼は2003年に57才という若さでガンに冒され突然亡くなってしまった。サム・クックとオーティス・レディングに憧れ敬意を払い、60年代の豊かなスウィート・ソウルの時代に華咲いたアーサー・コンレイは、最後までスウィートな気持ちのままその生涯を終えたのだと思いたい。
CD
1.You Don't Know Like I Know
2.You Send Me
3.My GIrl
4.The Dock 0f The Bay
5.I've Been Loving You Too Long
6.Another Saturday Night
7.Twisting The Night Away
8.I Thank You
9.Stagger Lee
10.When Something Is Wrong With My Baby
11.Bring It On Home To Me
12.Wonderful World
13.634-5789
14.A Change Is Gonna Come
15.Fa-Fa-Fa-Fa-Fa
16.Don't Fight It
17.Soul Man |