MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.73




73-『レコーディング・スタジオの伝説』(TEMPLES OF SOUND inside the great recording studios)
ジム・コーガン&ウイリアム・クラーク著 奥田祐士訳 ブルース・インターアクションズ刊
photograph参照
 

音楽が好きな人は憶えようとしてないのに大好きなアルバムのクレジットを自然と憶えてしまうことが何度もあるはずだ。そのアルバムの参加ミュージシャンだけでなく、曲名、プロデューサー、録音年月日、ライナー・ノーツのライター名、レーベル名(時にはレコード番号)、録音スタジオ、そしてレコーディング・エンジニアの名前を記憶してしまう。
そういうことを自然に憶えることで次第にそのレーベルがリリースしているアルバムに愛着を感じ他にもこのレーベルにいいミュージシャンがいないかとアルバムを探し始める。つまり音楽の宝の山を発掘するきっかけとなる。
そして、アルバムに関する記憶のデータはそれ以後アルバムを買う時の大きな資料になる。
私がブルーズに心奪われた70年代初期、日本盤のブルーズのアルバムはとても少なかった。だから輸入盤のライナー・ノーツを辞書をひきながら読んで知識を得ることも多かった。しかし、ライナーのない輸入盤もあってそういう時に買うか買わないかの判断をするいくつかのポイントがレーベル名、録音年月日、参加ミュージシャン、プロデューサー、エンジニアだった。だが、そういう記載さえないアルバムもあり、そうなるともう曲名とアルバム・ジャケットの「感じ」しかない。

この本「レコーディング・スタジオの伝説」には私が好きな50年代、60年代の音楽が録音されたスタジオとその録音を行ったエンジニアを中心にプロデューサーやミュージシャンの興味深い話がたくさん書かれている。チェス、アトランティック、スタックス、サン、モータウン、シグマ、J&Mと言った黒人音楽ファンに馴染みのレーベルのスタジオのことだけでなく、ナット・キング・コールやフランク・シナトラからビーチ・ボーイズまで高品質のポピュラー・ミュージックを量産したキャピトル、ロバート・ジョンソンからボブ・ディラン、サイモン&ガーファンクル、マイルス・デイビスが在籍したコロンビア・・・・・それぞれのスタジオ、エンジニアについてあふれるほどのエピソードが載っている。
私はミュージシャンでありながらそれほど音にうるさいタイプではない。知り合いのミュージシャンの中には自宅にスタジオを持っていたり、録音技術について勉強している人もいる。そういう人たちに比べると音への執着はない。スタジオに入るとエンジニアの人を相手に専門用語を使っていろいろ要求する人もいるが、私の場合は「もう少し固くしてください」とか「エコーを少なくしてください」とかカラオケ程度の言葉しかない。たまに「シルクのような声にしてください」とか「サム・クックみたいに・・」と言って、「それは無理です」とエンジニアの方に笑って却下されることもある。
「いい音」というのは人によって違うので私は他人に「これがいい音だ」と言う気持ちはまったくない。
でも自分の好きな音というのはすごくあって、それは自分の好きな音楽と直結している。
まったくダメなのが打ち込みのユーロビートの音とあの手の音楽だ。その流れでいくとトランスとかいうやつもダメだ。
逆に「これ、ノイズが気になる」と非難する人がいる魚を焼くようなノイズが入っているチャーリー・パットンのブルーズは大好きだし、完全に過大入力と思えるワン・ダーフルのオーティス・クレイの録音も好きだ。
私の場合は「あばたもえくぼ」でその音楽が好きになればその音も好きになることが多い。
その好きになって愛聴してきたアルバムたちの制作現場での話がこの本には満載されている。そして、立派なスタジオだからいいアルバムが出来るわけではないこともはっきり書かれている。また、どうして50〜60年代にあんなにたくさん素晴らしい音楽が生まれたのかもこの本を読んで再認識した。この本は自分が作りたい音、信じる音に向かってあらゆる可能性にトライして自分の音をゲットしたエンジニア、プロデューサー、ミュージシャンたちのワクワクする実話だ。秋の夜長におすすめの一冊です。
そして、最後に私たち(blues.the-butcher-590213)が目指している音楽を録音するのに現在の録音方法がまったく間違っていないことを強く確信した次第です。


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