私のマンションは風通しがいいのと天井が高いのが自慢だ。朝、窓を開けると白いレースのカーテンを押し退けるようにひんやりした風が足早に通り抜けていった。
ベランダを見ると数日前に買ってきた向日葵の背がかなり伸びている。他の植物も葉をたくさんつけて朝日の方を向いている。こんな清清しい朝なのに、朝一番部屋に流れたのはドロドロのスキップ・ジェイムズの"Devil
Got My Woman"だ。
「朝からスキップ・ジェイムズ!?」という方もいると思うが、実は昨日の夜更けにこの夏に公開されるマーティン・スコセッシ総監督の7本の映画(劇場公開は6本)の参考音源となる5枚組のボックス・セット"Martin
Scorsese Presents THE BLUES〜A Musical Journey"のDusc-1を聴いていたので、なんとなくDisc-2を聴き始めたのだ。その後、曲はレッド・ベリーの"C.C.Rider",ビッグ・ジョー・ウィリアムスの"Baby,Please
Don't Go"と続き、5曲目にはビリー・ホリディが出てきて6曲目はロバート・ジョンソンだ。"Crossroad Blues"を聴きながら、風に揺れるカーテン越しに白い雲が流れていく夏の空を見るのも風情のあるものだ・・・と思っていたら、昔、「朝からこんなのかけるの止めてくれる」と女に言われたことを思い出した。それはハウリン・ウルフだったが。あの女は風情の分らぬ奴だった・・と、
ここでサニ−・ボ−イの"Good Morning,Little School Girl"やないか、スク−ルガールたちはもう学校に行った後だが実にこの朝にふさわしいTPOな音楽(TPOは古いか)!思わず一緒に歌ってしまった。そして、25曲目のジョニー・オーティス・クインテット・ウィズ・リトル・エスター&ザ・ロビンズまで一挙に聴いてしまった。「夏の朝はラジオ体操とブルーズだ!」ということで、今日はこの5枚ボックス・セット"Martin
Scorsese Presents THE BLUES〜A Musical Journey"を紹介しょう。以前にも書いたが、私はこういうコンピレーション(かってはオムニバスと言っていたが)・アルバムが大好きだ。ブルーズを好きになり始めた頃は、金もなく、またどのブルーズマンのアルバムを買えばいいのかわからないので、とりあえずこういうコンピを買いその中で好きになったブルーズマンのアルバムを買うという方法をとっていた。ちなみにいまでもレコードを買いに行くたびに欲しいレコードがあり過ぎて、「ああ、タワーレコードを買い取りたい」と思うことがある。とにかく、レコード店に行くと少し人格が変わり「まぁ、所詮何千円のもんやろ」と気が大きくなり、カードで値段も見ずに買っていて返済に苦労したこともある。いまは自重している。「金がない時はレコード屋に近寄るな」-私の座右の銘である。さて、この5枚組、ブルーズ・ビキナーの方にはとくにお薦めしたい。しかもソニーの日本盤を買ってください。5枚で9450円、一見高そうに思えるが1枚1890円だ。なぜ日本盤かというとスコセッシの挨拶文から始まり、1曲づつ曲とミュージシャンの紹介が載った解説と歌詞のブックレットがついている。もちろん、これだけの解説で収まるものではないけれど、とりあえず初心者の方には充分な手引きだと思う。後は手を引かれてブルーズの広く、深い海に漕ぎ出してください。なにしろ5枚組115曲、有名ブルーズマンはざっと押さえてあるし、ボブ・ディランやロス・ロボスなんかも収録されている。映画に関連した5枚組ということでサウンド・トラックではない。
7本の映画にはもっとおもろいブルーズもブルーズマンも登場するので是非観てもらいたいが、映画に行く前に聴く「予習」のアルバムとしてはぴったりのものだ。これを聴き、ブックレットを読んでおけば映画をより理解でき、映画館でブルーズに盛り上がり、歌い踊りハイになれると思う。まあ、無理にハイならなくてもよいが・・。しかし、過日公開されていた「栄光のモータウン」なんか映画館で一緒に歌いたくてたまらなかったのは私だけではないと思う。こういうブルーズの映画が一挙に7本も公開されることはまずこれから先100年はないと思うので、映画もこういうアルバムも体験しておいてはいかがでしょうか。(04/08/02記) |