MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.17




17-必読の1冊!ブリックヤード・ブル−ス(原題 Journey Through The Blues)
キーフ・ハートリー/イアン・サウスワース著
ブルースインターアクションズ刊

去年の秋だったか、ブルースインターアクションズの立開君に偶然会った時、彼から「今度おもしろい本を出しますから・・・」と聞いていた。それがこの「ブリックヤード・ブル−ス」だった。年末は忙しかったので年が明けたらゆっくり読もうと思っていたが、この265ページ+付録の単行本をゆっくり読むどころかまる一日で全部読んでしまった。別に慌てて読んだわけではない。面白くて、読むのを途中で止められなくなり、その日行くはずだった病院もキャンセルして読み続けてしまったのだ。
著者はキーフ・ハートリーとイアン・サウスワースのふたりになっているが、キーフ・ハートリーが語ったものをイアン・サウスワースが聞き書きして作ったものだ。しかし、レコード店を経営し、文章も書いているイギリス人、イアン・サウスワースを私は全く知らない。もうひとりのキーフ・ハートリーと聞いても「ええっ!あのキーフ・ハートリーが本を出したの!」と、飛び上がって喜ぶ人がこのテレビ音楽の国に何人いるだろう。申し訳ないが、私でさえ「ああ、あのジョンメイオールのところにいたドラムのおっさんで、自分のバンドも持ってたなぁ」というぐらいの記憶しかない。名前はしっかり憶えているが、さてどんな顔の人だったかと思い出そうとしても出てこない。彼が活躍したのは60年代から70年代の中ごろまでで、それ以降彼の名前は私のヨレた記憶回路から次第にフェイド・アウトしていった。しかし、間違いなく60年代栄光のブリティッシュ・ロックの創設に貢献したドラマーで、特にブリティッシュ・ブルースを経験した人たちにとっては忘れられないドラマーのひとりだ。だが、残念なことにキーフはすでにスティックを置いて、ドラマー生活を引退していることをこの本を読んで知った。そういう彼の音楽経歴にまつわるイギリスの音楽状況の話も興味深かったが、やはりどきどきしながらページをめくったのはキーフや、クラプトン、ジョン・メイオールなどブリティッシュ・ブルーズ勢たちが黒人ブルーズと出会い、ブルーズの核に向って突入していく頃の瑞々しい日々のストーリーだ。それは私たちウエストロード・ブルーズバンドや70年代関西のブルーズに触発された者たちが、ブルースの広い海原に乗り出した頃の私の想い出と少し似ている。
キーフ・ハートリーは同時代のクラプトンのようにビッグ・ネイムにもなれず、ビッグ・マネーを得ることもなかった。でも、だからこそ率直にすべてを語ることができたとも言える。クラプトンには言えないことや、キーフの位置だからこそ気づいてこの本に記されていることもたくさんある。最後まで読み終わると、さほど有名でないこのふたりが作ったこの本からあふれるブルースとロックに対する愛情に心打たれている自分に気づいた。つまりブルーズもそうだが、素晴らしい音楽を作り上げる根底にはほんとに多くのUnknownな、知られていないミュージシャンたちのパワーや誠意や愛情があることを忘れてはならない。
「ブルースはホンモノの音楽だった」と語るキーフと同様、そのホンモノに心奪われた人たちならこの本を読んで大いに共感するはずだ。付け足すなら、キーフはじめブリティッシュの不良ミュージシャンの不良ぶりにも私は共感した。ビートルズもとんでもない不良だと再確認できたし・・。そして、最後に訳者、中山義雄氏のヒップな訳にも拍手を送りたい。それから付録も充実してます!あまり書くと読む楽しみがなくなるのでこの辺で終わりにします。(Photographに装幀写真有り)

[←back] [next→]
Page Top

| WHAT'S NEW | PROFILE | SCHEDULE | MUSIC/DISCOGRAPHY |
| BOOK | PHOTOGRAPH | MY NOTES |
| blues.the-butcher-590213 (The Blues Power) | LINK | GUESTBOOK |
Copyright © hotoke-blues.com. All Rights Reserved.
Mail to a site administrator: info@hotoke-blues.com
Mail to HOTOKE: hotoke@hotoke-blues.com
すべてのメールに返信できない場合があります。ご容赦ください。
  Powered by FUJI P.I.T.