MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.29




Freddy King Live In Europe
(デシタルサイト IEJR-0010)

これは70年代にフレディ・キングがツアーしたヨーロッパ3ケ所のライヴを収めたもので、実はそのひとつひとつをすでにビデオで持っているのだが、性懲りもなくやっぱりDVDを買ってしまった。しばらく前からレコード店に出ているのを横目で見ながら「買おうかな・・・いやビデオでもってるしなぁ・・でも、映像がきれいになってるんだろうなぁ・・いや、やめとこ・・」と、定価2980円に心は千千に乱れ、悩み、迷い、苦しみ(ちょっと大袈裟か)結局、買ってしまった。
しかし、やっぱり映像はきれいになっている。別にフランスの美人女優カトリーヌ・ドヌーヴを観るわけじゃないから、どちらかと言えば熊を観るようなものだからそんなに画像がきれいでなくても・・・と思うのだが、やはりフレディの表情が、その汗の一滴一滴が鮮明に見えるというのはドヌーヴとは違う意味で興奮する。しかし、いつ観てもフレディはエグイ!「ギタ−を持った渡り鳥」という小林旭の映画があったが、私はフレディを主役に「ギターを持った犯罪者」を作りたいと思った。もうとにかくギターが凶器に見える。そのギターを折らんばかりに絞る、チョ−キングするフレディ。ギタ−は「やめてぇ・・・壊れちゃう」と言ってるような感じだ。また、その風貌がすごい。「そんなにモミアゲ伸ばさんでもええんとちゃうの?」「そんなに襟のでかいシャツ、どこで買うてくるん?」「何でそんなそら豆に似てるん?」とつっこみを入れたくなる楽しさだ(実際、私は見ながらそう呟いている・・あぶないか、オレ?)。普通の状態でもテンションはマックス100の90はイッている。もうバックのミュージシャンたちは大変だ。毎日、毎ステージ、毎曲、このテンションなのだから。しかも時折、フレディはバックをぐっと睨んだり、何か注意したりしている。そのせいかフレディ以外のメンバーはみんな痩せている。そりゃこんな身体のでっかい、がっしりした、しかも喧嘩の強そうなおっさんに睨まれたらメシも喉を通らないだろう。
それにしてもフレディのグル−ヴは強力だ。身体の動きを見ていると彼のグルーヴ感がよくわかる。しかも歌もギターもパワフルでソウルフル。歌は歌っているというより咆哮している感じの時もあるし、ギターのチョ−キングひとつ、音のひとつにも魂を込めるような弾きっぷりには見ながらこちらも力が入る。野球で言えば豪速球のみ、変化球なし、常に球速160キロ以上、死球を受けたらほんとに死ぬような感じ。サッカーで言えばキーパーなのにひとりで敵陣に突っ込みシュートしにいく感じ。プロレスで言うと凶器、流血、失神っていう感じ。でも、ハードだけじゃなく実にあたたかい音質で、こまやかなフレイズも弾く。と思えば急に「なめんじゃねえぞ、小僧!」とアグレッシヴになる。もう目が離せない。電話に出れない。火事になっても逃げれない。DVDが終るまでトイレにも行けない。そのくらい惹きつけられる名演の数々。お客さんはヨーロッパでも大人しそうな、平和な感じのスイス、スウェーデンの人たちだ。ヨーグルト、チーズ、おおブレネリ!・・そういう人たちにこの暴力的なブルーズはあまりに濃いだろう・・と思っていたら、案の定色白の人たちの中にはず〜〜〜っと引いている人も多い。しかし、かまわずフレディは「どうだい?気分はいいかい?良かったらイェーッと言ってくれ!」とコールする。しかし、客はいまいち熱くない。すかさずフレディは「もっと大きな声で!」と催促する。そして、客席を睨みつけながら"This Is The Blues!"と言ってギターをギュィ〜ン。ああかっこいい親分・・・・。この2年後の76年には42才で天国へ行ってしまったフレディだが、このDVDを観ればライヴを一度観たかったとみんな思うはずだ。
しかし、彼の代表曲"Have You Ever Loved A Woman"を「愛の経験」と日本語訳してあるのはいかがなものか?しかもこの曲だけ日本語訳だ。辺見マリじゃないんだから・・。ああ辺見マリっていうのは辺見エミリのお母さんね。そのおかあさんのヒット曲にちょっとセクシーな「経験」っていうヒットがあったわけ・・。私、大学生の頃、そのおかあさんのファンだったわけ・・・そんで思い出したってわけ。(Photograph参照

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