MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.35




Blues100撰-その8
「Magic Sam/West Side Soul」

Magic Sam/West Side Soul( P-VINE Records PCD-23639/ Delmark 原盤)
(Photograph参照)
 

1967年に録音されたこのアルバムを初めて聴いたのは73年頃。5.6年のタイム・ラグがあったわけだが、68年の同じデルマーク・レコードからの2枚目"Black Magic"とほぼ同時期に聴き、どちらも同じようにすぐに愛聴盤となった。いまもこのBlues100撰にどっちを先に挙げようか迷ったくらいだ。しかし、私がこのマジック・サムに夢中になった時には、彼は32才という若さですでに亡くなっていた。その2枚目の"Black Magic"がリリースされたのが69年11月。そして、亡くなったのがその1ヶ月後、69年12月1日で心臓マヒだった。「ああ、この人のライヴは観たかったなぁ・・」と思うブルーズマンはたくさんいる。その中でもマジック・サムとフレディ・キングはまだ若かったので、もう少し長生きしてくれれば確実に来日し観れたはずだった。そして、70年代中期、日本のブルーズ・ムーヴメントの中でも彼は断トツの人気だったし、2枚のアルバムのセールスもすごく良かっただけに残念だ。
しかし、一番残念で口惜しかったのはずっとシカゴ・ゲットーで歌い続け、このアルバムとライヴで火がつき白人層でも人気が出始め、やっと全米へそして世界へ出て行くチャンスを掴みかけたサム本人だっただろう。
1曲目の"That's All I Need"は通常のブルーズの形式ではなく、R&B、ソウル風味のある曲だ。このアルバムを買った時、針をのせた(当然、アナログ盤でした)途端にコテコテのブルーズが流れてくると身構えていた私は肩すかしを食らった気分だった。しかし、サムのよく伸びる、そしてよく通るその声はすごく気持ちのいいものだった。2曲目の"I Need You So Bad"4曲目"All Of Your Love"7曲目"I FoundA New Love"などのミディアム・テンポのブルーズは、サムの味が最も出ている曲であり、彼の歌の上手さに感心する曲でもある。3曲目の"I Feel So Good"は私が「モダン・ブルーズ・ヴォーカルの最高峰」と言っているジュニア・パーカーの曲だが、このアルバムで私が最初にのけぞったのはこのスピード感、グルーヴ感とも満点のブギのこの曲だった。しかも、つきたて餅のようによく伸びる、そして躍動するサムの歌声はどうだ!これで身体が動かなかったら、あなたは医者へ行った方がいい。9曲目のブギ・インスト"Lookin' Good"でもサムの強烈なビート感が味わえる。
ベ−スのアーネスト・ジョンソン、ドラムのオディ・ペインのリズム隊も素晴らしいが、サイド・ギターのマイティ・ジョー・ヤングのギターの強力なサポートぶり!5曲目のボビー・ブランドの"I Don't Want No Woman"も、6曲目のブルーズ・スタンダード"Sweet Home Chicago"も、11曲目のJ.B.ルノアーの"Mama,Mama-Talk To Your Daughter"も私はこのアルバムを聴いて自分のレパートリーにした。これらのカヴァー曲には原曲とは異なるサムの若々しい、ストレートで真摯な気持ちが大きなパワーとなって表れている。
同じシカゴの先輩、マディ・ウォーターズたちの50年代のシカゴ・ブルーズではなく、またB.B.キング、ボビー・ブランドといったモダン・ブルーズの先輩たちとも違うソウルやファンクの匂いをさせた新たなブルーズの胎動が始まっていたことをこのアルバムは伝えている。"Black Magic"と"Magic Sam Live"もこのアルバムと同じように非常にクォリティの高いアルバムなので、是非聴いてもらいたい。そして、その勇姿を観たい方は"The American Folk Blues Festival Vol.2"を手に入れてボーナス・トラックを真先にクリックだ。そのお宝映像を観て「ああ生きてて良かった・・」と、私は本当に思った。そして、酔っぱらうとついつい言ってしまう-「マジック・サムがもし生きていたらなぁ・・・」と。
Good News-6月からP-VINE レコードの「デルマーク・レコードの再発シリーズ」が始まっているので是非この機会に手に入れてください。

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