MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.36




テリー・エヴァンスの新譜
「何気なく、衒いもなく、さりげなく、だが沁み込んでくる彼の心」
Terry Evans /Fire In The Feeling
(Valley Entertainment  VLT-15200)輸入盤
(Photograph参照)
 

テリー・エヴァンスは日本ではあまり知られていない歌手だ。ライ・クーダーのアルバムのコーラスとして(ソロをとっている曲もあるが)記憶している人もいるかも知れないが、ソロ・アルバムを聴いている人は少ないと思う。ソロ・アルバムはいままでに5.6枚はリリースされており、95年の"Puttin' It Down"や2001年にリリースされた"Mississippi Magic" なども優れたアルバムだが、残念ながら日本のレコード店で見かけることは少ない。また、ライのコーラスとして参加しているボビー・キングとデュオ・ヴォ−カルとして黒人サーキットで長く活躍していたが、最近はやってないのだろうか?そのデュオのアルバムも何枚か出ていてどれも素晴らしいものだが、88年ライがプロデュースした"Bobby King Terry Evans/Live and Let Live"(Special Delivery Records SPD1016)はずっと私の愛聴盤だ。
R&Bとブルーズ色の強いソウル・シンガーと言う表現しか私には思い当たらないが、ディープな一面もありながらその歌のタッチはさらっと乾いている。無理のないとてもスムーズな唱法も彼の個性だ。とにかく生まれ持った声質が抜群にいい。今回の"Fire In The Feeling"もそういう彼の魅力が充分に発揮された1枚。ひどく革新的なことがあるわけでもなく、格別目新しいことをやっているわけでもないが、さりげなくてじわっと胸に入ってくるアルバムだ。たぶん何年経っても聴きたくなる1枚になると思う。ブルーズからバラード、フォーク、ジャズ・ファンク・テイストの曲といろんなスタイルの曲が収録されているが、どれも彼の歌声にフィットしている。そのひとつの理由は彼が自分自身で曲を書いているからだと思う。実は テリー・エヴァンスは才能のあるソングライターでもあり、ポップス・ステイプルやルイ・ジョーダンなどが彼の曲を録音している。今回のアルバムも半分近くは彼の自作曲だ。その作風はソウル、ブルーズ、ゴスペル、カントリーがまろやかにブレンドされていて、ダン・ペン、ライ・クーダー、ジョン・ハイアットといった白人のソング・ライターに通じるものを感じる。ライの曲も1曲入っている。レコーディング・ミュ−ジシャンはほとんど知らない人たち(私が名前を忘れている可能性も大だが)だが知ってる人がひとりだけ参加している。ディヴィッド・リンドレイだ。
この名前を聞いて少しはこのアルバムのテイストを想像できる人もいるだろう。

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