MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.37




Johnny Guitar Watson In Cocert (DVD INAK 6539-1)(photograph参照
 
来日ツアー中の横浜のライヴハウスで、ジョニ−・ギターが心臓発作を起こして急死したのは96年のことだった。まだまたやれる61才という若さだった。大阪のブルーズ・バーで飲んでいた私は知り合いからの電話でその訃報を聞き、すっかり酔いが冷めたことをいまも憶えている。
テキサスに生まれブルーズからその音楽キャリアが始まったジョニー・ギターだったが、実に多才なミュージシャンで作詞作曲から歌、ギター、ベース、ピアノ(彼の初期のプロとしての仕事はピアニストだった)、キーボードといくつもの楽器をこなし、70年代中ごろからはコンピューターも使い、ほとんどひとりでレコーディングし独自のファンク・ワールドを作り上げた。そして、そのジョニ−・ギターのレコーディング方法を受け継ぎメジャーで時代の華を咲かせたのが、彼に憧れていたプリンスだ。しかし、ジョニ−・ギターのファンクはジェイムズ・ブラウンともスライ・ストーンともニューオリンズのミ−タ−ズとも、そしてプリンスとも違う。ジョニ−ギターの世界は関西弁で言うところの「いなたい」(都会的になりきれない、どこか田舎臭い、でもすごくGood!!という意味)フィーリングに満ちている。それはまず歌がダウンホームというかレイドバックしており、ジェイムズ・ブラウンのような血管ぶち切れのテンションがないことと、ギターがテキサス風ブルーズ・ギターの匂いをプンプンさせていることに因っている。彼の曲にはジャズ風味(複雑なジャズ・コードが使われている曲もある)も、また洗練されたソウルの風味もあるのだが、どういう訳かギター・ソロになるとコテコテのブルーズ・ギターになる。そこが彼の個性でありすごくおもしろいところなのだが、思わず「なんで自分で作った洒落た曲をそうやっていなたいブルーズ・ギターで壊すの!?」と突っ込みを入れたくなる。
50年代半ばにRPMレコードから出した彼のブルーズギターが堪能できる"HotLittle Mama"や"Three Hours Past Midnight""Gangster Of Love"といった一連のファンキー・ブルーズも恐れ入るくらい素晴らしいし、60年代のR&Rのラリー・ウィリアムズとのアルバム"Larry Williams Show With Johnny Guitar Watson"なんかのロッキン・ブルーズも低血圧の私には効果てきめんだが、やはり彼のマルチな才能が開花したのは1970年の中頃に"Fantasy Records"から発表した I Don't Want to Be Alone, Stranger からだと思う。そこからDJMレコードに移籍し、彼は自分の思うファンクを完全に開花させ、80年初めまでに"Ain't That a Bitch " "A Real Mother for Ya" "Funk Beyond The Call Of Duty"などの素晴らしく下世話な、ブラック・ストリートに根ざした優れたアルバムを残した。90年に入ってしばらく低迷していたが、95年に実に彼らしいファンキーなアルバム"Bow Wow"でカムバックし喜んだのも束の間、そのカムバック・ツアーをやっている最中に横浜で倒れた。
今回発売されたこのDVDは1990年にドイツで行われたTVショウを収録したものだ。70年中期以降のファンク路線の曲が主になっているが、"Three Hours Past Midnight""Gangster Of Love"といったファンキー・ブルーズ・ナンバーも収録されている。いろんなギミックなギター・プレイあり、客席突入あり、客とのコール&レスポンスあり、女性にバラの花配りあり、女性の前で膝まづきギター・プレイあり、本当に素晴らしいライヴ・パフォーマーとしてのジョニー・ギター・ワトソンが楽しめ、そして彼の多才さを改めて感じたDVDでした。ジャケットにビビらないで買ってくださいね。中には女性に優しい、いなせな、おもろいワトソン君が入ってます。ちょっと落ち着きがないけどね。ひとつ気になったこと。客席前列に熱烈な男のファンがかなりいるんですが、それって私のライヴに似てるなぁって思いました。別にそんなこと似てても嬉しくはないんですが・・・。

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