MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.38




Bonnie Raitt "Souls Alike"(Capital Records 73628)(photograph参照)
 
「大人の女とはこういうことです・・ボニーの新作!」 
ボニー・レイットは私にとって最も魅力的な女性ミュージシャンのひとりとなり続けている。「大人の女性だが決して女を売り物にせず」「堂々としているけど偉そうではなく」「力強いけど色香がある」ボニー・レイットがもし近くにいたら恋してしまうかも知れない。個人的にも音楽的にも・・。御覧になった方もたくさんいると思うが、映画《ライトニン・イン・ア・ボトル》で「エルモア・ジェイムズ!」と言って振り返り、妖艶な笑みを浮かべてスライド・ギターのバーを滑らせた時の彼女の美しさにはもう心奪われるしかなかった。悪魔のようであり天使のようでもあった。容姿も美しいがあのギターと歌がそれに加わった時の美しさをもつ女性ミュージシャンはいない。
ボニーのお父さん、ジョン・レイットはブロードウェイ・ミュージカルでは有名なシンガー、俳優だ。12才でギターを持ちブルーズに魅せられた白人の我が娘が、やがて学校をドロップ・アウトして黒人ブルーズマンの中に入っていく姿を父はどう思っていたのだろう。それも人種差別撤廃や黒人の公民権運動が激しかった60年代という時代だ。しかし、音楽的には比較的早くからいい評価を受け、とくにそのスライド・ギターに関しては早くからコアなミュージシャンの間でも話題になっていた。私が最初に買った彼女のアルバムは72年発表の"Give It Up"だった。ベア−ズヴィル・スタジオで録音されたこのアルバムはいまでもよく私のターン・テーブルで回る愛聴盤だ。これは彼女が私淑し共にツアーを回ったブルーズマン、フレッド・マクダェルと当時アメリカによってひどい戦禍を受けていた北ベトナムの人々に捧げられている。このアルバムが気に入って"Takin' My Time""Streetlights"と立て続けに買ったが、その後の"Home Plate"(たぶんこのアルバムだと思う)あたりから彼女のアーシーな一面が削られ、変にポップに移行していったために私は聴かなくなった。その後、ワーナー・レコードの契約が切られたあたりから、彼女はアルコール依存症に陥っていたと後から知った。それが80年代前中期だった。そして、その後に彼女と《再会》したのが89年のグラミーに輝いた"Nick Of Time"だ。その後、"Luck Of The Draw"、"Longing In Their Hearts"、そしてライヴ盤と彼女は立て続けに彼女らしい素晴らしいアルバムを作った。そして、彼女自身によるプロデュースのこの新作"Souls Alike"もそれらのアルバムに劣らず素晴らしい1枚となっている。表題の"Souls Alike"は9曲目の"Deep Water"という妖艶な曲に出てくる一節だが、「似たような魂たち」とでも訳すのだろうか。表ジャケットの写真を見ると、少しお太りになられたかのようなボニー嬢だが相変わらずお美しい。前作と同じ自分のツアー・バンドのメンバーを核にしながら、エッジのある骨格のしっかりしたサウンドになっている。
新作の私のお気に入りは妖し気なサウンドの2曲目の"God Was In THe Water"、5曲目の語り風の歌詞の後ろで彼女のスライドが呻く"Trinkets"。そして、3曲目のピアノのジョン・クリアリーが書いた"Love On One Condition"は、昔のアレン・トゥーサンの曲を思い出させるファンキーな1曲。そのファンキーなサウンドにのってボニーのスライド・ギターがウィ〜ンと唸っていて気持ちいい。クリアリーは充実した2曲提供しているが、ピアノとキーボード・プレイも実に素晴らしく、また幅を広げた感がある。最後の"The Bed I Made"では心のこもったリリカルなピアノを弾いる。
ボニー・レイットは自己のしっかりしたバンドへの確信を持ち、セルフ・プロデュースすることでこれからまた新たな荒野を開拓していくそのさきがけとなるアルバムのような気がする。私自身の「えこ贔屓」分を差し引いても充分お勧めできる1枚です。10.1.05 著

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