MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.39




2005 Summer New Albums/Stones,Hiatt,Clapton&B.B!!
 
今年の夏はオールド・スク−ル組にとっては、前回に書いたボニー・レイットの新譜同様に気になるアルバムのリリースが続いた。

The Rolling Stones/a bigger bang(EMI 0094634120029) (photograph参照
通算24枚目にあたるストーンズのオリジナル・アルバムの発表は8年ぶりだそうだ。
全編相変わらずと言えば相変わらずのストーンズ節が炸裂しているアルバムだが、今回はなぜかどこかが違うような気がする。
ミックの声はやたら元気で、これもジョギングとヴォイス・トレーニングのおかげなのだろうか?私も近所をチャリで走り回り、たまに夜更けのバッティング・センターに行っているがそれじゃダメか?以前「チャーリーがストーンズをやめたらストーンズは解散だ」とキースが語っていたけど、そのチャーリーの気持ちのいいグルーヴも健在だ。ロン・ウッドも相変わらず的確なギターを刻んでいるが、6曲ほどは録音に参加していない。やはりレコーディングはミックとキースの強力なイニシアティヴの元に作られているようだ。そのキースもシャープなギターはいつもながら見事だが、今回は"This Place Is Empty"という大人のラブ・ソングを他の誰にも歌えないキース風味たっぷりに歌ってくれている。私にとってはこれがこのアルバムのベスト・テイクだ。立て続けに3回聴いてしまった。
さっき相変わらずと書いたが、新曲は新しいと言いつつもやはりミックとキースの作ったものだけにふたりのいつものカラーがたっぷり出ているし、チャ−リーのグルーヴが突然変るわけでもないのでいい意味での相変わらず。それで前の97年のオリジナル・アルバム"Bridges to Babylon"あたりと何が違うのかなと思って聴いていたら、パワーと気合いではないかという結論になってしまった。しかし、ロック・バンドに大切な要素はそのパワーと気合いではないかとこのアルバムを聴いてつくづく思う。とくにストーンズのような基本的にライヴ・バンドはみんなそうだ。「いまでもジャンピング・ジャック・フラッシュをやるとワクワクする」とキースが雑誌のインタビューで言っていたが、そのワクワク感がなくなったらバンドは終りだし、そのワクワク感を保つためには気合いとパワーが必要だと思う。もちろん、新しさがまるでないわけではなく、例えばキースの歌のように年を重ねた者しかできない新しさがあるし、プロデューサー、ドン・ウォズの力か?サウンドの肌触りにも彼等なりの新しさを聴くことができる。
ストーンズは年をとってもロックはできるということを実際に証明し続けているバンドだけど、ロックをするためには、音楽をやり続けるためには、ひとつのことを続けるためには何が必要なのか明解に答えている偉大なバンドだ。それは音楽以外の事を生業にしている人たちにも大きなパワーになるのではないだろうか。
余談ですが、私がストーンズのアルバムの中で最も好きな2枚は、"Aftermath"(66年)と"Between the Buttons"(67年)です。 あまりに古すぎるか・・・・。そして、私は亡きブライアンのファンです。

Master Of Disaster/John Hiatt (NEW WEST Records NW6076) (photograph参照
「アメリカン・ロックやなぁ」-これがジョン・ハイアットの新譜「マスター・オブ・ディザスター」を聴いた最初の印象。この人もストーンズ同様に作る曲にはハイアット風味というのがたっぷりある人だ。そういう彼の曲に惚れ込んだ人たちがたくさんいて、彼の曲はボニー・レイット、イギー・ポップ、ネヴィル・ブラザーズ、バディ・ガイ・・と実に幅広いミュージシャンたちにカヴァ−されている。70年代初期から本格的な活動を始めて、ソロ・デビューが74年。曲はいろんな人に取り上げられるものの本人はあまり売れなくてライ・クーダーのバンドのリズム・ギタリストとして参加したり、一時はアル中だったこともあった。私もそのライの「ボーダー・ライン」というアルバムで最初、彼の名前を知ったのだが、いいなぁ・・と思い始めたのは87年にリリースした"Bring the Family"と88年の "Slow Turning"あたりだった。そのあと、90年代初期にライやジム・ケルトナー、ニック・ロウと作った"Little Village"というアルバムも素晴らしくて、このメンバーがそのままバンドになっていくのかと思ったがそれは無理だったようだ。覆面レスラーが写った面白いジャケ写の今回のアルバム"Master Of Disaster"は、ハイアットの長年の友人でもあり、古くはストーンズの「スティッキー・フィンガーズ」やライ・クーダーのアルバムのセッション・ミュージシャンとしても有名なジム・ディキンスンがプロデューサーとなっている。そして、バックにはそのディキンスンのふたりの息子であり、最近ブルーズ・ファンの間で話題になっている「ノース・ミシシッピー・オールスターズ」のルーサーとクーディ・ディキンスンが参加している。
まだじっくりというほど聴いていないが、なかなか充実したアルバムでやはりいい曲をすでに3曲ほど見つけた。この人のアルバムは時間が経って後から「ああ、こんないい曲が入ってる」と気がつくことが多いので、これから何度も聴かないと・・・。タイトルの"Master Of Disaster"とは「負け癖の名人」というような意味らしい。

Eric Clapton/Back Home (REPRISE 9362-49395-2) (photograph参照
正直に言うと私はクラプトンが苦手だ。ここからちょっと自分のことを棚上げさせてもらって言わせてもらう。私がずっと係わっているブルーズというジャンルにエリック・クラプトンという名前は頻繁に登場してくる。一般的には「白人ナンバーワンのブルーズギタリスト」であり、「ホワイト・ブルーズ、ブルーズ・ロックの第一人者」なのだが、以前から言っているように私はクラプトンのブルーズ・アルバム、つまり前作の"Me and Mr Johnson"や、世間では高い評価を受けた"from the cradle"があまり好きではない。それは一言で言うとブルーズを歌う時の彼のヴォ−カルにブルーズの深度を感じないからだ。もっと言えば、ブルーズにとって大切なリアリティとか衝撃と言ったものを私はあまり感じない。しかし、クリームの昔から彼の作ったオリジナルや彼が歌うブルーズ以外のカヴァ−は大好きなのだ。
"Layla and Other Assorted Love Songs"や"Slow Hand""461 Ocean Boulevard"といったアルバムはいまでも愛聴盤であり、"Wonderful Tonight""Bell Bottom
Blues""Let It Grow"などはほんとにいい曲だ。彼は素晴らしいソング・ライターであり、そしてオリジナルを歌う彼も大好きなのだ。今回はオリジナル・アルバムだというのでかなり期待して私はこの新譜を買った。
まあ、今回のアルバムはジャケットの中の写真にもあるように「私はいま美しい妻と可愛い子供たちに囲まれてとっても幸せです」という報告のアルバムだ。歌もサウンドもジャケ写もすべて愛に満ちている。ひねくれ者の私は「嫁はんは若くてきれいやし、子供たちは可愛いし、たぶんお金もたくさんあるやろし、ギターもたくさん持ってるやろし(これがいちばんうらやましい)、悠々自適やね・・・ふ〜ん、良かったね。」と言うしかない。まあ、ここまで幸せの報告をされると、ようやるなぁ・・と思いつつアホらしくもある。でも、人に「幸せになるな」なんて言えへんしね。
音楽的にはクラプトンが作っている"Say What You Will"や"One Track Mind""Run Home To Me"もいいメロディだし、4曲目の"Love Don't Love Nobody", ジョージ・ハリソンの6曲目の"Love Comes to Everyone" もいい、クラプトン・バンドにここのところずっといるギターのドイル・ブラムホールが作った"Piece Of My Heart"も悪くない。でも、ブルースっぽさはこのアルバムにはない。まあ私はさっき言ったように彼のオリジナル・アルバムにブルースっぽさを求めていないので、別にそれは不満ではない。でも、なんかなぁ・・・もの足りない。スカッとせんなぁ。ポップ過ぎるのかなぁ・・。エッジがなさ過ぎるのかなぁ・・。でも、ええ曲もあるし・・と、まだよくわからないまま三日に一度は聴いているのだが。やっぱりなんか苦手かな、クラプトンは。

B.B.King/B.B.King &Friends-80 (Geffen Records 0602498853566) (photograph参照
このアルバムを買った3日ほど前にヒューストン・ジャンプの偉大なブルーズマン、ゲイトマウス・ブラウンの訃報を知り、がっくりしていただけにこの御大B.B.の80才記念アルバムはうれしかった。
歌声もギターも衰えた感じはまるでしない。それどころか、各曲に迎え入れられているゲストたちに対してほとんど楽勝で存在感を示している。歌でタイマン張っているのはヴァン・モリソンとボビー・ブランドだけだ。あとはB.B.の横綱相撲だ。シェリル・クロウなんかは軟式テニスをやってればよかったのに、硬式テニスどころかふんどし締めて相撲の土俵に上がってしまった・・・感じだ。しかも、曲(I need your love so bad)が難しい。Z.Z.トップのビリー・ギボンズとホール&オーツのダリル・ホールもかなりがんばっているが、フ−のロジャー・ダルトレーなどは印象がない。アルバムを何枚ももっている大好きなグロリア・エステファンもいまいち届かない。クラプトンはいつもどおり手堅いギターだ。エルトン・ジョンはR&R調の曲を選んだのが正解して、ピアノもはじけていて楽しい。しかし、いちばんいいテイクはやっぱボビー・ブランドとのデュエット"Funny How Time Slips Away"となってしまう。曲もいいし、ふたりは余裕だ。
以前、93年の"Blues Summit"そして97年の"Deuces Wild"と同じように各曲にゲストを招いたアルバムとなっており、「またか」と思われる方もいるだろうが、B.B.が元気で新譜を出してくれるだけで私はいい。この歌声とギターの音色だけを聴くだけで、いままで何度もパワーをもらってきたし今回ももらった。「B.B.は今日もブルーズを歌っている・・・」-そう想うだけでブルーズをやっていく気に私はなる。
だからずっと歌い、ギターを弾いて欲しい、B.B.キング。


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