MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.46




46-Blues100撰-その12「John Lee Hooker/Burnin'」
(VEE JAY LP-1043 日本P-VINE RECORDS)1961年録音(photograph参照
 

1.Boom Boom
2.Process
3.I Lost A Good Girl
4.New Leaf
5.Blues Before Sunrise
6.Let's Make It
7.I Got A Letter
8.Thelma
9.Drug Store Woman
10.Keep Your Hands To Yourself
11.What Do You Say

2001年に84才で生涯を閉じたジョン・リー・フッカーが残したアルバムは100枚以上はあると思う。 弾き語りスタイルもあれば、バンド・スタイルもあり、アコースティックもあればエレキもあり、レーベルも初録音のモダン、Vee Jayそしてチェス、キングなど20以上に渡っている。レコ−ド会社と待遇のことでモメて偽名を使って他のレーベルで録音したこともある(すごい根性してる・・・)。ジョン・リーだけでなく昔のブルーズマンにもレコード会社にも「アルバム・コンセプト」なんていう意識はまずなくて、出したシングルを集めてアルバムにするというのが最初だ。まあ、私もディレクター氏に「今回のホトケさんのアルバム・コンセプトなんですが・・・」という話を出されると、「コンセントなら家にたくさんあるんだけど・・」なんてショーモない冗談を言うくらいコンセプトは苦手だ。と言うより私の場合、人生のコンセプトがないとも言える。昔のブルーズマンたちは録音してお金を貰えると思えば、とにかく録音したのだ。契約や印税のなどの知識などほとんどない(私もない)から騙されることも多かったが、とにかくその場で貰うお金が納得できる金額であればすぐにレコーディングした。まあ、その納得できる金額というのも5日間ぐらい酔っ払えるくらいというのも多々ある。いわゆる「目先の金」「明日の100万より今日の1万」だ。たぶんジョン・リーもそんな感じで次から次へとレコーディングしたんだろう。だから100枚以上あるアルバムの中には「これはどうだろう・・・?」と思うような、星ひとつも無理みたいなものも当然ある。しかし、そんなアルバムでも私のようなフリークはどこかしらいいところを探してしまう。「このアルバム駄作なんやけど、この2曲目のハウッ!っていうとこがかっこええんよね」という調子だ。つまり、その「ハウッ!」だけに2500円払っている馬鹿だ。そこで、ここに皆さんに紹介する「Burnin'」は100枚以上あるジョン・リーのアルバムの中でも星5つ!まず買って損はない。ブルーズ初心者にもお薦めの一枚。
リリースされたのは1962年。かのビートルズがデビューした年。小学6年の私が同じクラスの川上恵子さんを好きだった頃だ。たぶんこのブルーズ100撰でまたジョン・リ−の他のアルバムを取り上げることになると思うが、何故このアルバムをまず選んだかと言えば、バックがバンド・スタイルできっちりした録音に仕上がっていること、そして音がいいことだ(Vee Jayはほんとに録音が素晴らしい)。もちろん、ジョン・リ−の歌はパワフルでやる気まんまんだ。
1曲目の"Boom Boom"はR&Bチャートだけでなくポップ・チャートにも上がったヒット曲。この曲を私は中3くらいの頃にブリティッシュ・ブルーズ・グル−プ「アニマルズ」で聴いて知ったが、もちろんその頃はジョン・リ−を知る由もなかった。その頃は同じクラスの松下京子さんが好きだった(またどうでもいいことだが、思い出したので・・・)。ジョン・リ−は「ブギの王様」と呼ばれたが、この曲はジョン・リ−風ブギをほんの少しポップなサウンドで包んだブルーズの名作だ。ジョン・リ−は「ブギの王様」と呼ばれているが、このアルバムの4.5曲目のようなミディアムやスロー・テンポのブルーズが私は好きだ。こういうのを弾き語りでやっているアルバムを聴くともうドロドロで、そのジョン・リ−のドロ沼に入っていく快感を覚えたらもうヤバイ。私のように人生のコンセプトがなくなる。
また、このアルバムを聴いてもらえばわかると思うがジョン・リ−は一般的なブルーズの形式(4小節でコード・チェンジするとか、ワン・コーラス12小節で完結すること)を、しばしば無視する。つまり、バックがブルーズの形式どおりコード・チェンジしてもジョン・リ−のギターのコードは変らない・・・とか、小節を無視して先に次の歌に入ってしまう・・とかということをする。まあ、本人にしてみれば弾き語りをやっている時の自由な感じでやっているだけのことなのだろうが、音楽的にスクウェアな人は「これ気持ち悪くない?」と私に聞くが、私は全然気持ち悪くない。かっこいい!と思う。ジョン・リ−にこの疑問を「あなたは通常のブルーズのフォーム通りにコード・チェンジしない時がありますが、あれはなぜですか?」と質問した人がいた。するとジョン・リ−はそれは愚問とばかりに一刀両断「コード・チェンジっていうのは、歌っている自分の気持ちがチェンジするからするものなんだ。気持ちがチェンジしてないのにどうしてチェンジする必要があるんだ」かっこいい!この言葉!ブル−ズを志す者はこの言葉を肝に命じるべきだ。ブルーズはフォームではない。ブルーズは気持ち、魂、ソウルだという名言だ。
このアルバムはバックがきっちりしていると書いたが、実はバック・ミュージシャンはベースのジェイムズ・ジェマーソンを中心とするモータウン・レコードの連中だというのはほぼ定説になっており、私もそれは間違いないと思う。モータウンもデトロイトの会社で、ジョン・リ−もデトロイトで花開いた人だからこういう録音があっても不思議ではない。ただ、モータウンは自社のバック・ミュージシャンにも他のレコード会社のレコーディングをさせない厳しい会社だったので、これは名前を出さない裏の仕事だったのだろう。しかし、全編にうなるビートは強力だ。とくに10曲目のラテン調のビートなどはすごくモダンでかっこいいし、ジョン・リ−もノッテるのがよくわかる。
9曲目の"Drug Store Woman"はずっとひとつのコードで、ジョン・リ−がひとりでずっと何か喋っているトーキング・ブルーズだ。彼はこういうトーキング的なブルーズが多い人でもある。何を言ってるのだろうと思ったら「まあ、みんな聴いてくれ、オレは口紅やら化粧品をドラッグ・ストアで買っているような女は要らないんだ。オレは毎日家にいてくれてメシをちゃんと作ってくれたり、風呂を入れてくれるような女がいいな・・ドラッグ・ストアで化粧品ばっか買ってる女なんて要らないぜ」というようなことを言っている。いまで言えば「マツモトキヨシ」に毎日行って新しい化粧品を物色して、香水プンプンさせてイケてる女だと思っているような女のことだ。こういう歌もジョン・リ−の独特のふてぶてしい声で"I don't want no drugstore woman〜"って歌われるとカッコよくなる。そして私は「そうそう、そんな女要らないよなぁ」と、大いに共感する。
とにかく、ブルーズの門を叩くならこのアルバムは絶対入手しなければならない!現在、日本のP-VINEレコードから紙ジャケ・シリ−ズで出ているので是非聴いてもらいたい。ジョン・リ−はかっこいいよ!ブン!ブン!ブン!



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