MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.48




48-昔、ひとめ惚れした歌姫ドリス・トロイ
Doris Troy/sings 「Just One Look」& Other Memorable Selections
(collectable COL-CD-6719) (photograph参照
 

ヒットしたミュージカル"Mama I want to sing"を御覧になった方はかなりいると思うが、あの主人公のモデルがこのドリス・トロイであることを知っている人は少ないと思う。また、このアルバムのタイトルにもなっている"Just One Look"をどこかで耳にしたことがある人もいるかも知れないが、日本でドリス・トロイの知名度は悲しいほど低い。そこで先日、レコード店で1963年にアトランティック・レコードからリリースされていたこのアルバムが再発されているのを見つけたので、出回っているうちに是非買い求めてもらいたくて取り上げた。
私が彼女を知ったのはアトランティック・レコードのR&Bのコンピレ−ションだったと思う。その中にこの甘酸っぱい"Just One Look"が入っていた。私は曲名通りその歌声に「ひとめ惚れ」した。鍛えられた声によるパワフルで切れ味の良い歌唱だが、その声の奥にはしっとりとした情感がある。"Just One Look"がヒットしたのは1963年。当時流行ったガールズ・ポップとR&Bの中間くらいのムードをもったこの曲や1曲目の"What'cha Gonna Do About It?"などがイギリスでウケて、60年代後半に彼女はイギリスに移住してしまう。確かに当時のイギリスのファンが大好きだったガールズ・グループ"ロネッツ"あたりのテイストを彼女は持っているが、もう少し硬派な感じと取り上げる曲がゴスペル風、ジャズものとレンジがかなり広い。そして、移住した彼女はイギリスのミュージシャンのアルバムにゲスト・ヴォーカルとして迎えられたり、バック・コ−ラス(ローリング・ストーンズの"You Can't Always Get What You Want"やピンク・フロイド"The Dark Side Of The Moon"にも参加している)としての仕事を多くやっている。その後69年にはビートルズのレーベル「アップル」から"Doris Troy"というアルバムをリリースしている(このアルバムはタワー・レコードあたりにはいつもある。これもいいです!)これは私の想像だが、イギリスでは人種の差別もあまりなく尊敬され、大切にしてもらったのではないだろうか。
そして、80年代半ばに前述した"Mama I want to sing"で再び脚光を浴びて、彼女のお母さんの役としてミュージカルにも出演してツアーを回っていた。その後、病に倒れラスベガスに移り住み2004年に67才で亡くなってしまったが、私の中ではいまもずっと心に残っているシンガーのひとりだ。そして、"Just One Look"は2分30秒の名曲です。



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