MY NOTES > My Feeling For The Blues > No.55




55-ジュニア・ウエルズの「匂い」
Junior Wells/Live At Theresa's 1975
(Delmark/P-VINE RECORDS PCD-23828)(photograph参照
 

ジュニア・ウエルズの魅力は何と言ってもその「匂い」だろう。ディープなブルーズとファンキーさが混ざった黒人街バック・ストリートの「匂い」がこのアルバムからもプンプンと匂ってくる。いままでもジュニアのライブは何枚かあったが、このアルバムは彼がホームとしていたクラブ「テレサズ」のライブだけにその「匂い」は一層強烈だ。30〜40人ほどで満員になってしまうという小さな「テレサズ」で常連やダチたちに囲まれてリラックスしつつも、ピシッと張りつめた緊張感を持ちながら独自のスタイリッシュなグルーヴでステージを進めていくジュニアの姿がうまく収められている。ウィスキーやタバコや香水の匂いが漂い、お姉ちゃんが大きな腰を振って踊り、それにちょっかいを出す男がいて、店の片隅にはちょっとヤバイ奴がいて、カウンターで酔いつぶれてる奴もいる・・・そういう店内の話声や嬌声やノイズがマイクに被って入ってくるファンキーなこういうブルーズ・クラブの空気感が私は何よりも好きだ。
長くこの店を本拠地にしていたジュニアもこういうムードをこよなく愛していたに違いない。そして、晩年までそういうロウ・ダウンな「匂い」を発散しながらブルーズを歌い続けたジュニアを私はいまも懐かしく想い、彼のブルーズを愛している。もし、ブルーズの生のムードを堪能したいのなら、また何がブルーズなのかということを知りたいのならやはりこういうアルバムを聴くべきだろう。つまり、ギターがどうのとか歌がどうのとかいう以前のブルーズが発生してくる土壌みたいなものを知りたいのなら・・。もちろん、このアルバムでのジュニアの歌やハープはやはりワン&オンリーで文句なしにカッコイイし、ギターのフィル・ガイ(バディ・ガイの弟)、バイザー・スミス、サミー・ローホン等のサポートも臭くていい。アット・ホ−ムなムードの中、客と気さくに会話を交わし常連の誕生日のために思いっきりブルージーな"Happy Birthday"を歌ってプレゼントするジュニアも聞ける。
1975年、日本に初来日する直前のジュニア・ウエルズの素晴らしいブルーズをデルマーク・レコードは記録しておいてくれた。さあ、きついウィスキーをワン・ショット胃袋に放り込んでジュニアのブルーズを聴きながら踊ってくれ!


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