読み終わるまでに長い時間がかかったけれど面白い本だった。時間がかかったのはこの本の分量が多いということだけでなく、K氏からお借りした「ヴードゥーの神々“ジャマイカ、ハイチ紀行”/ゾラ・ニール・ハーストン著 常田景子訳」という本も同時進行で読んでいたからだ。その本もとても興味深い本で夏の終りから10月まではずっぽりヴードゥー漬けだった。
私がVooDoo(ヴードゥー)という言葉を最初に知ったのはジミ・ヘンドリックスのワイルドな曲"VooDoo Chile"だったと思う。その頃は「かっこいい曲やなぁ」で終っていたのだが、ブルーズと出会ってからこのヴードゥーというなんとも無気味な響きのする言葉が、実はブルーズだけでなく黒人音楽を理解するのに大切な言葉のひとつだとわかってきた。その後ブルーズマン、マディ・ウォ−タ−ズの有名曲"Hoochie
Coochie Man"の中にある"John The Conquerer Root"(征服者ジョンの根)も"Black
Cat Bone"(黒猫の骨)も"Mojo Tooth"(モジョの歯)もすべてブードゥーに関する言葉だとわかり、ジュニア・ウエルズの素晴らしいアルバム"Hoodoo
Man Blues"のHoodoo(フードゥー)もヴードゥーの別称だと知ったが、ヴードゥーそのものが何なのかは一向にわからなかった。辞書で引いてみると「ヴードゥー教《西インド諸島や米国南部の黒人間で行われる魔術的宗教》、そのまじない師、そのまじない(呪術)」と短い記載があるだけだった。しかし、時間が流れ黒人音楽により深く入り込むことにより少しは知識を得て、またアメリカのヴードゥーの拠点ニューオリンズを訪ねたりするうちに「ヴ−ドゥ−」がアフリカ系の信仰宗教としてだけでなく、文化、生活、習俗として存在していることを知った。それもなんとなく・・。自分の怠慢な性格もあり気になってはいたが、ブードゥーの根幹に辿り着こうとはせずにそのままになっていた。そして、今回ヴ−ドゥ−の決定版とも言えるこの「ヴードゥー大全」に出会った。なんせ「大全」だ。この本にはヴードゥーの発生から歴史、各国でのヴードゥーの実態、その儀式の方法、音楽との関係、そして人々に与えている精神的な部分までがとてもわかりやすく書かれている。また、あまり知らないハイチやキューバ、ジャマイカ、南米の生活習俗や文化のことも書いてあり興味深かった。ヴードゥーと音楽に関する記述も多いので黒人音楽全般と旅が好きな人には面白い読み物だと思う。
もちろんブルーズをより深く知りたいと思っている方にはお勧めです。ただ読み切るにはちょっと根性が要りますが、まあ秋の夜長にどぞ。
余談-初めてニューオリンズを訪ねた時、「ヴードゥーの館」という怪し気な観光スポットがあり行ったことがあった。館というほどの大きさはなく小屋くらいだったが、うす暗い中には骸骨や動物の羽根や骨やひからびた植物や土なんかが展示してあり、お香のような変な匂いの煙りが漂っていた。そして、ヴードゥー教の偉大な術師であるという女性の肖像画が飾ってあり、奥の椅子に座っている女性はその末裔ということだったが私にはうさん臭い占師のように見えた。もっと真実味があって怖いところかと思ったが笑ってしまうほど安っぽくてがっかりした。でも記念に・・・と思い「女にモテてセックスが強くなる」というモジョが入っているお守りのような袋をひとつ買ってきた。しかしその後、女にモテることもなく、セックスが強くなったという感触もなく・・・。ああ、そのニューオリンズ滞在中、某クラブで働いていたオカマチャンにはモテてました。行く度にウィンクされてました。モジョが効いてたのか?
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