オーティス・レディングという名前を聴くだけで胸の奥が温かくなる。
激しさと優しさと力強さと繊細さ・・・彼の歌声には何度も涙させられている。
最初に彼の歌を聴いたのは高校生の時、曲は"Sitting On The Dock 0f The Bay"。ビートルズやストーンズを追いかける当時ロック少年だった私はその曲がオーティスの最後のシングルで彼がすでに他界していたことなど知る由もなかった。"Sitting On The Dock 0f The Bay"はビートルズなどに混じって日本のラジオのポップ・チャートにも上がってきていた。アメリカではそれが唯一チャート1位になったオーティスの曲だが日本では何位くらいまで上がったのか記憶にない。本格的にオーティスを聴き始めるのは20才くらい。ブルーズから黒人音楽全般に興味をもち始めてからだ。20代半ば過ぎて「ブルー・ヘヴン」というバンドをやっている頃にMr.Pitiful,These Arms Of Mine,Love Man,Pain In My Heartなどオーティスの曲をいくつかカヴァーしたが、この"Sitting On The Dock 0f The Bay"は歌わなかった。それはこの曲が最後にオーティスの口笛がフェイド・アウトして終わるのだけど、私の口笛が下手な所為だった。
その後、いわゆる「サザン・ソウル」と呼ばれる音楽にハマってO.V.ライト、スペンサー・ウィギンス、ジェイムズ・カーなどディープ・ソウルにどんどん入り込んで行った最初のきっかけとなったのがオーティスだった。だからオーティスは私にとって「ソウル」という大きな家の真ん中に座っている父のような存在だ。そして、そこはいつ訪ねて行ってもいつも温かく迎えてくれる場所なのだ。だからオーティスの歌声がどこかのカフェやバーで流れるとつい微笑んで「ああ・・・オーティスや」と懐かしく聴き入ってしまう。
そんなオーティスの集大成的なDVD「 The Legacy Of OTIS REDDING 」が発売された。
オーティスが出演したTV番組やプロモ・フィルムそしてライヴ映像の間にオーティスの奥さんゼルマ、そしてスタックス・レコードで「ブッカーT&MG's」のメンバーとしてオーティスのレコーディングそしてソング・ライティングに大きく関与したギタリスト、スティーヴ・クロッパー、そしてメンフィス・ホーンズのウエイン・ジャクソンなどのインタビューを入れてオーティスの人柄、ミュージシャンとしての姿を浮き彫りにしているグレイトなフイルムだ。過去見たことのある映像も多いが改めてこうしてまとめて見るとやはり彼は比類なきソウル・シンガーであり、人種の壁を超えて自分の音楽を伝えようとする姿には胸が熱くなる。とくにモンタレー・ポップ・フェスのライヴ映像でのオーティスの歌はまさに剛速球ひとすじ。ほとんどの客が白人の若者という野外フェスの初めての舞台で自分の中に高まっていくソウル(魂)を吐き出すように歌うオーティスの姿はいつ見ても感動的だ。客席に自分がいるような気にさせられるほど彼の歌とパフォーマンスにやられてしまう。
インタビューの中ではオーティスの死後、再婚を勧められたがずっといまもひとりでいる奥さんゼルマの話がとても興味深かった。
あまり中身の話をしてもつまらないので是非、このフィルム観てください。
ちなみに私は数あるオーティスの名曲の中で"I've Been Loving You Too Long"(愛しすぎて)がいちばん好きなのですが、まだ歌ったことがありません。それはこの曲を愛しすぎているからです。でも、いつか・・・。
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