「遠い昔の男のブルーズを聴いた曇り空の一日/2009.6.16」
今日はずっとレコーディング・ザ・ブルーズ史上、初のギター・ブルース/カントリー・ブルースであるシルヴェスター・ウィーヴァーのアルバム"Guitar Blues"を聴いていた。
録音は1923年から27年。録音に雨音ようなノイズの混じった「いにしえ」の音がしている。
このシルヴェスター・ウィーヴァーの録音が生まれたのは、サラ・マーティンという女性クラシック・ブルーズのレコーディングをギターだけでやったのがきっかけだったらしい。1920年代に女性シンガーによって歌われヒットしたブルーズはクラシック・ブルースと呼ばれ、バックは主にピアノだけかジャズバンドが担っていた。それがそのサラ・マーティンのレコーディングの際に「ギターのうまい奴がいる」ということでギターだけをバックにしてみようということになった。そこで呼ばれたのがギタリストのシルヴェスター・ウィーヴァー。
そして、史上初めて歌とギターだけのブルーズのレコーディングが行われた。
1923年10月24日・・・おおっ!私の誕生日だ。
このアルバムの中にはウィーヴァーのギターの上手さが伝わるラグ・タイム調のファンキーなものから、サラ・マーティンやヘレン・ヒュームズのブルーズのバックをしたもの(しなやかなヘレン・ヒュームズの歌が素晴らしい)、またウォルター・ビーズレーという名のギタリストとのデュオ、その中にはウィーヴァーが歌っているユルいブルーズも何曲か収録されている。
スライド・ギター、バンジョーも披露されている。
そして、1927年の録音を最後にこのシルヴェスター・ウィーヴァーはぱったりと音楽シーンから姿を消している。生きてはいたらしいが何をしていたかはわからないという。録音として残っている曲は50曲ほどだ。こんなに素晴らしいギターを弾く人が何故ギターをやめてしまったのか・・・謎だ。
全てニューヨーク録音。都会の黒人だからこの後にレコーディングされる南部のチャーリー・パットンやサン・ハウスに比べると洗練されたブルーズを演奏している。とくに少しゆったり目の曲で彼の本領は発揮されている。
なにもかもすっかりデジタルな世の中になってしまって追いかけていくのが精一杯の毎日に、ジャケット写真もぼやけていてよくわからない遠い昔の男の歩いているようなスピードのブルーズ。
しかもザラザラとノイズまじり。そのノイズさえ心地よいアナログな私。
また、生涯聴きつづけるだろう大切な一枚と出会った。 |